イスラエルの気鋭ベーシスト、初のリーダー作
イスラエルの人気レーベルRaw Tapesより、イスラエルジャズの進化を支えてきた注目のベーシスト、ギラッド・アブロのソロデビュー作『Leaf Boy』が発売された。
空間的なサウンドが現代ジャズ、もっと言えばRaw Tapesらしい本作は気鋭ピアニストのニタイ・ハーシュコヴィッツ(Nitai Hershkovits, p, synth)や、長年共演するドラマーのアミール・ブレスラー(Amir Bresler, ds, perc)がほぼ全面参加している他、ゲストでセフィ・ジスリング(Sefi Zisling, tr)、さらにバターリング・トリオ(Buttering Trio)のリジョイサー(Rejoicer, synth)、ケレン・ダン(KerenDun, vo)などさながらイスラエルの現代ジャズシーンのオールスターの様相だ。
ギラッド・アブロはこの作品の中でアコースティック・ベース(コントラバス)とエレクトリック・ベースの両方を弾いているが、多彩なゲストを迎えながら自在に変化していくサウンドは、進化するイスラエルジャズシーンの中で常にそれを支えてきた彼ならではの適応力であり、所業のように思える。
イスラエルジャズの進化を支えてきたベーシスト、ギラッド・アブロ
ギラッド・アブロ(Gilad Abro, 今作では「Abro」名義)は1981年に南アフリカのケープタウンに生まれ、10歳で家族と共にイスラエルに移住している。アルバムタイトルにもなった(1)「Leaf Boy」は南アフリカの自然や木々の中で育ったアブロの回想録だ。
ベースは16歳ではじめ、17歳の頃には既にプロとして活動していたようだ。ベーシストとしてはアビシャイ・コーエン(Avishai Cohen)やオメル・アヴィタル(Omer Avital)といった同郷の偉大なベーシストの影響下にあり、これまでにダニエル・ザミール(Daniel Zamir)、シャイ・マエストロ(Shai Maestro)、ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、ヨタム・シルバースタイン(Yotam Silberstein)、アモス・ホフマン(Amos Hoffman)といったイスラエルジャズのトッププレーヤーたちのバンドに参加し絶大な信頼を寄せられてきた。イスラエルジャズの熱心なリスナーなら、どこかで彼が力強くベースを演奏する姿を観たことがあるはずだ。
決して派手なソロで目立つタイプのベーシストではないが、隆盛を極めるイスラエルジャズシーンを支えるギラッド・アブロが満を持して放つ初のリーダー作『Leaf Boy』は、様々なジャンルを飲み込みながら進化を続けるイスラエルジャズを総括する輝きを放っている。