美しくしなやか、知的なチェンバージャズ傑作
現代アルゼンチン音楽シーンの最重要ピアニスト/作曲家のアレハンドロ・マンソーニ(Alejandro Manzoni)のオクテートによる新作『Formato de Cámara』が素晴らしい。ジャズとクラシック、そしてアルゼンチンに根付くフォークミュージックのもっとも良い部分がうまく融合し、夢のような音楽が奏でられている。2019年ベストのひとつになりそうな予感だ…。
オクテット(8人)編成の今作は、通常のピアノトリオに加え、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、さらにクラリネットとフルートが参加。アルゼンチン・フォルクローレの影響を受けた楽曲群には繊細なアレンジが施されており、洗練されたジャズで聴くアンサンブルはとても心地良く響く。
とにかく作曲、編曲のセンスも素晴らしく、オクテットの温かみのある演奏には音楽を聴く喜びが詰まっている。近年注目を浴びるアルゼンチンのジャズシーンの中でも、この作品は最高峰なのではないだろうか。
寡作のベテランピアニスト
アレハンドロ・マンソーニは1963年生まれのベテランピアニスト/作曲家。同じくピアニストである父親の Pedro A. Manzoni の手解きでピアノを始めている。
この完璧に美しい音楽を聴けばアルゼンチンジャズを代表する音楽家だろうとは思うが、録音ではサイドマンとしての活躍が多いようでリーダー作は実は少なく、トリオで録音した2002年『Aire Fresco』と2008年『Las Tres Orillas』、そして文字通りソロピアノの2010年『Solo Piano』につづき、本作『Formato de Cámara』は4作目となる。
サイドマンとしてはアルゼンチンの歌手ルドミラ・フェルナンデス(Ludmila Fernandez)やベネズエラ出身の歌手セシリア・トッド(Cecilia Todd)や、度々来日し日本でも人気のギタリスト、キケ・シネシ(Quique Sinesi)らの作品で彼のピアノを聴くことができる。
本作にはこれまでのアルバムの楽曲をオクテート用に再アレンジされたものも多く、高い評価を得た前作『Solo Piano』など、過去作とあわせて楽しみたい。
Alejandro Manzoni Octeto :
Alejandro Manzoni (ピアノ)
Guido Martinez (コントラバス)
Irene Cadario (ヴァイオリン)
Daniel Kovacich (クラリネット)
Daniel Lifschitz (フルート)
Paula Pomeraniec (チェロ)
Dolores López Mckenzie (ヴィオラ)
Leandro Savelón (ドラムス, パーカッション)