トゥニコ・ダ・ヴィラ、脈々と継承される古き良きサンバ
トゥニコ・ダ・ヴィラ(Tunico da Vila)というサンビスタの名前を見て、ブラジル音楽通の方なら“あれ?この人もしかして…”と思うかもしれない。
そう、彼の父親はサンバの巨匠マルチーニョ・ダ・ヴィラ(Martinho da Vila, 1938年 – )。ブラジルでもっとも偉大なサンバ歌手のひとりで、近年では2016年のリオデジャネイロ五輪の閉会式で名曲「Carinhoso」を歌ったことでも記憶に新しい。
息子トゥニコ・ダ・ヴィラ(1973年 – )はそんな父親の背中を見て育ち、彼もまた生粋のサンビスタとなった。2020年の新譜『Fases da Vida』は時代に日和った余計な装飾のない、それこそ完璧なサンバ・アルバムである。父に比べれば日本などでの知名度は低いものの、本国ブラジルでは現在、サンバのプレイリストでもっとも多い視聴回数を誇るアーティストだ。
やはりこういう昔ながらの飾らないサンバは最高だ。
曲調も歌もサウダージ満載だけど、カヴァキーニョもパンデイロもギターもクイーカもじめっとせず、カラッと乾いているところになんか魅入られるんですよね。
サンバという音楽は日本人にとっては遠いブラジルの音楽だけど、人生の本質や普遍性のようなものが詰め込まれているような気がしている。
トゥニコ・ダ・ヴィラの新譜『Fases da Vida』は、世の中理不尽なこと、辛いことがたくさんあるけど、また明日もなんとか生きていこう、そんな気分にさせてくれる素敵なアルバムでした。