キューバを代表する若手ピアニスト、アロルド・ロペス・ヌッサ新譜『Te Lo Dije』
聴けば自然と体が動き出さずにはいられないようなラテン気質のジャズから、ヨーロッパ的な叙情まで幅広いスタイルが魅力的。
キューバの若手実力派ピアニスト/作曲家のアロルド・ロペス・ヌッサ(Harold López-Nussa)の新譜『Te Lo Dije』は現代最高のラテンジャズ作品のひとつと言っても過言ではないだろう。
メンバーはアロルド・ロペス・ヌッサの他、トランペットのマイケル・ゴンザレス(Mayquel González)、ベースのフリオ・セサール・ゴンザレス(Julio César González)、そしてアロルドの実弟でもあるドラムス/パーカッションのルイ・アドリアン・ロペス・ヌッサ(Ruy Adrián López-Nussa)の“ファミリア”がコア・カルテットを成す。
アロルドのルーツであるフランスの作曲家、ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)の(3)「The Windmills of Your Mind(邦題:風のささやき)」のカヴァーは本作では異色の1曲だが、圧倒的に知名度の高い曲であるだけに特筆すべきだろう。感性豊かなコード進行をしたためた原曲の情緒を大切にしながらも、ラテン気質な明るさが加わっており、原曲の高すぎる湿度を見事に中和する驚きのアレンジが展開される。
(4)「Lila’s Mambo」はアロルドの末っ子に捧げられた曲で、彼女の可愛らしい声がフィーチュアされている。
続く(5)「El Buey Cansao」はキューバを代表するサルサバンド、ロス・ヴァン・ヴァン(Los Van Van)のカヴァー。
(7)「Un Día de Noviembre(11月のある日)」はキューバを代表する作曲家/ギタリストであるレオ・ブローウェル(Leo Brouwer)の名曲で、クラシックのギタリストに好まれる曲だが今作ではバンドでアレンジされた豊かな響きを聴かせてくれる。
キューバン・ジャズの名家の血の証明
アロルド・ロペス・ヌッサ(Harold López-Nussa)は類稀な音楽一家に育っている。
元を辿ればキューバの伝統音楽であるソンと、アメリカから海を越えてきたジャズが出会った1950年代、フランスから移住してきた祖父母が原点だ。ピアノの名手であった祖母はジャズにのめり込み、二人の息子…長男ルイ・ロペス・ヌッサ(Ruy López-Nussa, =アロルドの父親)をドラマーに、次男エルナン・ロペス・ヌッサ(Ernán López-Nussa, =アロルドの叔父)を世界的なジャズピアニストに育て上げた。
そんなドラマーの父、ピアノ教師の母という音楽一家のもと1983年に生まれたアロルドは当然のように音楽に親しみながら育ち、幼少期よりピアノを始め、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』でも著名なキューバの伝説的歌手オマーラ・ポルトゥオンド(Omara Portuondo)とツアーを行うなど次第にキューバを代表するピアニストとして育っていった。
2005年、スイスで行われたモントルー・ジャズ・ソロ・ピアノ・コンペティションで優勝し、その名を世界に轟かせた。
Harold López-Nussa – piano, keyboards
Mayquel González – trumpet
Julio César González – bass
Ruy Adrián López-Nussa – drums, percussion
Guests :
Randy Malcom – voice, timbales
Cimafunk – vocal
Kelvis Ochoa – vocal
Heikel Fabián Trimiño – trombone
José Julián Morejón – percussion
Jorge Aragon – additional keyboards