『Rascunhos』現代ブラジリアン・ジャズの最前線
ブラジル・サンパウロ出身のピアニスト/作曲家、ルーイッジ・ウーレイ(Louise Woolley)の3rdアルバムとなる新譜『Rascunhos』。ジャンルはジャズに分類されるが、クラシック音楽やブラジルの先人音楽家たちが築いてきた豊かな音楽文化を継承する作品で、非常にクオリティが高い。
収録曲はラストの(8)「Primeiro Dan」を除き、どれも“下書き”を意味する「Rascunho」+番号という素っ気ないものだが、ピアノトリオに2管を加えたクインテットを軸にした演奏はコンポジションと即興の境界も曖昧な、れっきとした現代ジャズ。コンポジションは非常に複雑で、エルメート・パスコアールやギンガといったブラジルの鬼才たちを思わせる巧みなメロディーやハーモニーも聴き応えがある。インプットは大胆に、アウトプットはシンプルに。そんな哲学が感じられる。
数曲でリヴィア・ネストロフスキ(Lívia Nestrovski)がスキャットで参加しており、その透明感のある歌声でよりアルバムの印象を確かなものにする。
現代的でアカデミックな曲が多いが、(7)「Rascunho No. 7」のダニロ・シウヴァ(Danilo Silva)のガットギターをフィーチュアしたサンバ・ジャズなど、感覚的な昂りを感じさせる楽曲が多く、聴いていてとにかく爽快だ。
本作はブラジルを代表するジャズレーベルになりつつあるBlaxtreamからのリリース。
“下書き”の次に何が来るのだろう…そんな期待を膨らませてくれるアルバムだ。
Louise Woolley – piano
Bruno Migotto – double bass
Daniel De Paula – drums
Jota P. – saxophone
Diego Garbin – trumpet, flugelhorn
Danilo Silva – guitar
Lívia Nestrovski – vocals