マルティニークの新鋭ピアニスト Xavier Belin、素晴らしいデビュー作
フランス海外県マルティニーク出身の気鋭音楽家二人──ピアニストのグザヴィエ・ベリン(Xavier Belin)と、ドラマー、ティロ・ベルトロ(Laurent-Emmanuel Tilo Bertholo)の双頭名義のアルバム『Pitakpi』は、近年盛り上がりを見せるマルティニークのジャズの要注目作だ。
同郷の人気ピアニスト、グレゴリー・プリヴァ(Grégory Privat)のアルバムを思わせるサウンドが特徴的で、燦々と輝く太陽と海を感じさせる開放的な音楽性がとても良い(ドラムスのティロ・ベルトロはグレゴリー・プリヴァの2016年作『Family Tree』にも参加している)。
カリビアン音楽の影響を強く受けたジャズだが、かといってラテン丸出しでもなく、フランス本土のジャズにしばしば感じられる印象主義的な香りも強い、絶妙な作品だと思う。
アルバムタイトル「Pitakpi」とは?
今作は全編カルテットで演奏されている。
アレクシス・ヴァレット(Alexis Valet)のヴィブラフォン、エルヴィン・ビロニアン(Elvin Bironien)のエレクトリック・ベースも素晴らしく、特に巧妙にうねるベースのグルーヴはこのアルバムの個性をより一層引き立てている。ベースのエルヴィン・ビロニアンはパリ生まれだが、母方の祖父がマルティニーク出身とのことで幼少時からカリブ文化に親しんできたようだ。
アルバムタイトルの“ピタクピ”とは、ジャケットにも描かれているマルティニークの伝統的な竹の楽器ティブワ(tibwa。クラーベの一種)を叩く音のオノマトペ(擬音語)だという。ティブワの音は(1)「Intro Pitakpi」と(11)「Outro Pitakpi」をはじめアルバム全編で大々的にフィーチュアされており、軽やかに叩かれる音は確かに“ピ・タㇰ・ピ”とも聴こえる。
Xavier Belin – piano
Alexis Valet – vibraphone
Elvin Bironien – bass
Tilo Bertholo – drums