ヴェロニカ・スウィフト、社会問題をテーマにした硬派な新譜
米国の新世代ジャズシンガー、ヴェロニカ・スウィフト(Veronica Swift)の新譜『This Bitter Earth』は社会的テーマに焦点を当てた優れたジャズ・ヴォーカル作品だ。今作で彼女が歌うのは性差別((2)「How Lovely to Be a Woman」)、人種差別/外国人排斥((3)「You’ve Got to Be Carefully Taught」)、家庭内暴力((8)「He Hit Me (And It Felt Like a Kiss)」)、そしてフェイクニュース((12)「The Sports Page」)といった近年問題となっているシリアスなテーマ。取り上げている楽曲はジャズ、ミュージカル、R&Bなど多岐にわたるが、いずれもヴェロニカ・スウィフト自身が選び、楽曲に込められた想いに深く向き合い、独自に解釈し、自身の主張と重ね見事にひとつの物語としてまとめ上げた渾身の傑作となった。
アルバムタイトルにも採用された(1)「This Bitter Earth」は1960年に“ブルースの女王”ダイナ・ワシントン(Dinah Washington, 1924 – 1963)の歌唱によって広く知られるようになった楽曲。苦しみの中で生きる女性の目に映る景色はすべてが灰色で、地球さえも苦々しい…そんな情景を圧倒的な歌唱力と表現力で歌うヴェロニカ・スウィフトは圧巻の一言。
演奏はエメット・コーエン(Emmet Cohen, p)、中村恭士(Yasushi Nakamura, b)、ブライアン・カーター(Bryan Carter, ds)をコアトリオとし数曲でゲストが参加。演奏は燻銀の様相で、ヴェロニカ・スウィフトにぴったりと寄り添い彼女の歌を引き立てる。
デビューは9歳!幼い頃から音楽に親しんだサラブレッド
ヴェロニカ・スウィフト(Veronica Swift)は1994年生まれ。
両親はともにミュージシャンで、父親はジャズピアニストのホッド・オブライエン(Walter Howard “Hod” O’Brien, 1936 – 2016)、母親は歌手のステファニー・ナカシアン(Stephanie Nakasian, 1954 – )という音楽的に恵まれた家庭環境に育ち、わずか9歳で『Veronica’s House of Jazz』というデビューアルバムを出している。
マイアミ大学在学中の2015年にセロニアスモンク・ジャズヴォーカル・コンペティションで2位を受賞。現在米国のもっとも優れたジャズシンガーのひとりとして知られている。
Veronica Swift – vocals
Emmet Cohen – piano (all tracks except 8); celeste (4)
Yasushi Nakamura – acoustic bass (all tracks except 1, 8)
Bryan Carter – drums (all tracks except 1, 8)
Lavinia Pavlish – violin (1, 3, 4, 13)
Meitar Forkosh – violin (1, 3, 4, 13)
Andrew Griffin – viola (1, 3, 4, 13)
Susan D. Mandel – cello (1, 3, 4, 13)
Aaron Johnson – alto sax (6), bass flute, flute (7)
Armand Hirsch – acoustic guitar (8), electric guitar (13)
Steven Feifke – conductor (1, 3, 4, 13), background vocals (13)
Ryan Paternite – background vocals (13)
Will Wakefield – background vocals (13)
Stone Robinson Elementary School Choir – background vocals (13)
Walton Middle School Girls Choir – background vocals (13)