マーク・コープランド、盟友ジョンアバ追悼の美しすぎるソロピアノ作

Marc Copland - John

マーク・コープランド、盟友ジョン・アバークロンビー追悼作

米国のピアニスト、マーク・コープランド(Marc Copland)が2017年に逝去したギタリストの盟友“ジョンアバ”ことジョン・アバークロンビー(John Abercrombie)をトリビュートしたアルバム『John』は、マーク・コープランドらしい個性的な感性で綴られる豊かなハーモニーがこの上なく美しいソロ・ピアノ作品だ。

今作はジョン・アバークロンビーのECMの初録音作品『Timeless』(1975年)からの標題曲(1)「Timeless」で幕を開け、遺作となった『Up and Coming』(2017年)に収録の(3)「Flip Side」、(6)「Sunday School」などジョン・アバークロンビーの遺した曲をピアノという楽器を通じて再構築する内容となっている。思慮深く奏でられるピアノは抒情的でありながらも同時に美しくねじれ、マーク・コープランドというフィルターを通した鬼才ギタリスト・ジョン・アバークロンビーの肖像を浮かび上がらせる。(4)「Sad Song」などは特に、マークの左手の和音はジョンアバのギターかと幻聴するほど。これはお互いをよく知る音楽家同士だったからこその為せる業で、そのピアノの美しい響きからはなんとも表現しようのない悲しみも伝わってくる。

(5)「Avenue」はジョン・アバークロンビーとラルフ・タウナー(Ralph Towner)によるギター・デュオ名盤『Sargasso Sea』(1976年)からの選曲。

マーク・コープランドは1948年生まれ。当初は出生名であるマーク・コーエン(Marc Cohen)を名乗りサックスを演奏、フィラデルフィアやニューヨークのジャズシーンで活躍した。1970年代初頭、独自のハーモニーを追求する中で単音しか出すことのできないサックスに不満を抱きピアノに転向。ボルチモア〜ワシントンD.C.に移り10年間ピアニストとして修行し、80年代中頃にジャズシーンに戻ってきた。

マーク・コープランドとジョン・アバークロンビーは1960年代からの旧友で、付き合いはドラマーのチコ・ハミルトン(Chico Hamilton, 1921 – 2013)のカルテットまで遡る。当時はまだサックスを演奏していたマーク・コープランドだが、その後も二人の関係はずっと続き、2010年代までデュオアルバム『Speak to Me』含む共演作を多数残してきた。

マーク・コープランドは2019年にジョンアバ同様に関係性の深かったベーシストのゲイリー・ピーコック(Gary Peacock, 1935 – 2020)へのトリビュート作品『Gary』をリリースしており、こちらも素晴らしい内容となっている。

Marc Copland – piano

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