レニー・センデルスキー、弦楽五重奏との幽玄なミズラヒ音楽
ロシア・サンクトペテルブルク出身、2011年にイスラエルに移住したサックス奏者/作曲家レニー・センデルスキー(Lenny Sendersky)が弦楽五重奏団ムーン・ストリングス(Moon Strings)と共演したユニークなアルバム 『Blues Mizrahi』(2020年)は、ミズラヒ音楽文化に影響された自身のルーツを見つめる優美な室内楽ジャズだ。
(2)「Take Five」、(6)「In A Sentimental Mood」、(11)「I Got Rhythm」以外はすべてオリジナルで構成されている。これらのスタンダードもストリングスとサックスという編成で秀逸な演奏だが、やはりオリジナル曲で見せる個性が魅力的な一枚。
海抜マイナス213mと世界で最も低地にある淡水湖であり、イエス・キリストのゆかりの地でもあるイスラエル北東部に位置するガリラヤ湖をテーマにした(1)「Sea of Galilee」は、ストリングス・クインテットのイントロに導かれ、古代から続く歴史ある土地の幽玄の時の流れを表現する。
(3)「Walking in St. Petersburg」は生まれ育ったサンクトペテルブルクの街を優雅に描き出す。
最注目はアルバムタイトル曲(5)「Blues Mizrahi」。
その名の通りミズラヒ音楽にインスパイアされたオリエンタルな楽曲で、ストリングス・アンサンブルによる室内楽の雰囲気と、サックスが奏でるミズラヒの旋律が妖しくも魅力的。この曲のみイスラエルの若手ベーシスト、エフード・エッテン(Ehud Ettun)がベースソロでゲスト参加している。
中東やアラブ文化圏に住むユダヤ人(=ミズラヒム)の豊かな音楽的遺産が散りばめられた、力強く美しいアルバムだ。
レニー・センデルスキー略歴
レニー・センデルスキー(Lenny Sendersky)は1982年ロシア生まれ。主にアルトサックス、ソプラノサックス、フルートを演奏。
デンマークで音楽家としての国際的なキャリアをスタートさせた後、2011年にルーツであるイスラエルに移住し、国内外のミュージシャンらと演奏活動を行ってきた。これまでにランディ・ブレッカー(Randy Brecker)、アモス・ホフマン(Amos Hoffman)、カルメン・ソウザ(Carmen Souza)、テオ・パスカル(Theo Pascal)、トニー・ロマーノ(Tony Romano)といった音楽家らと共演。ジャズシーンでの地位を確立してきた。
Lenny Sendersky – alto sax, soprano sax, flute, tambourine (1), vocal (5)
Ehud Ettun – bass solo (5, 8)
Arkady Shilkloper – French horn (8, 9, 10)
Oshy Daban – vocal (4, 5)
Moon Strings :
Artur Adamyan – violin
Andrei Rukhadze – violin
Shamil Saidov – viola
Nikolai Solonovich – cello
Dmitri Semenishev – bass