アルゼンチンとアフリカの音楽が“風流”に重なる傑作
前作『Manos de Cielo』(2017年)が絶賛されたアルゼンチンのシンガーソングライター、ミラグロス・マホ(Milagros Majó)の4年ぶりの新譜『Füryü』。タイトルは文字通り日本語の「風流」に由来しており、アルバム一枚を通して心安らぐ良質なポップ・フォークに仕上がっている。
ミラグロス・マホの「風流」の解釈は、“人間は風のように、自然の中で流れなければならない”という哲学のようだ。人間は常に自然の一部であるというこの日本文化の概念が彼女の心を打ち、今作での落ち着いた、ある種の喜びと諦観の入り混じったような不思議な感覚の作品を生み出した。
ミラグロス・マホは子供の頃、夏休みをマル・デル・プラタ(ブエノスアイレス州の都市)近郊の広大な自然に囲まれた祖父母の宅地で過ごし、そこで多くの大切な記憶を刻んだ。それらの体験は彼女の音楽に大きなエモーションを与えている。
(1)「Una Melodía」と(5)「Füryü」では、同じ旋律が繰り返し登場する。ムビラ(カリンバ)とピアノで演奏されるこの素朴なメロディーが、まさに彼女の原風景なのだろう。
このプロジェクトは2019年末から始まったが、数曲を録音した時点でパンデミックにより中断を余儀なくされ、再びミュージシャンを集めてスタジオに入って再開できたのが2020年8月。長い時間を経て、ようやく2021年6月にリリースされた。
ミラグロス・マホはアルゼンチンの伝統音楽だけでなく、アフリカ音楽からも多大な影響を受けている。
今作でもアフリカの楽器ムビラを印象的に用いているが、パンデミックの最中はティナリウェン(Tinariwen)やトゥマニ・ジャバテ(Toumani Diabaté)といったアフリカ音楽をよく聴いていたとのこと。
彼女の音楽から感じられるゆったりと包まれるような安心感は、そうした素敵な人間性の賜物だ。
Milagros Majó – vocal, cuatro, mbira, creole guitar, cristalofon, semillas, chorus
Diego Lezcano – piano, synthesizer, programing, acoustic guitar (3), cuatro (1), semillas (3), talking drum (7), chorus
David Fernandez – drums, percussions, tabla, darbuka, arpa de boca, semillas, trumpet
Federico Blotta – synthesizer (2, 3, 4, 6, 8)
Philippe Bacque – bass (2, 3, 6, 7), acoustic guitar (6)
Agathe Cipres – trumpet (2, 7), chorus (1, 7)
Juan Ravioli – bass, electric guitar, semillas, synthesizer (1)
Florencia Alvarez Guardo – chorus (1)
Lola Lezcano – chorus (1)