超強力な変拍子エレクトロ・ジャズメタル。Shwesmo新譜『Trail to Now』
イスラエル出身、現在は米国ボストンのバークリー音楽大学で教鞭を取る傍らで演奏活動を行うギタリスト/作曲家ビートメイカーのShwesmoの新譜『Trail to Now』。ジャズを学びながら、ここ数年はエレクトロニカに深く傾倒するShwesmoことヨエル・ゲニン(Yoel Genin)の集大成的な作品となっている。
(1)「Count on Us」はドラマー、ヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)とのデュオで、二人の双頭名義の前作『Binary Farm』の再来といったプログレメタル×エレクトロニカ×ジャズといった強烈な印象。リズムを捉えようと追ううちに3分間はあっという間に過ぎてしまう。
スイス出身の若く才能溢れる逸材ベーシスト/シンガーのシャロン・レノルド(Sharon Renold)のヴォーカルをフィーチュアした(2)「Entwined」は今作の注目トラックだろう。最初シャロンは誘うように歌うが、じきに魔性が姿を表す。サイエンス・フィクションも想起させる音作りも見事だ。Shwesmoの世界観がよく表れた楽曲。
ラッパーのカオス・ライト(Khaos Light)を迎えた(4)「Self Reflection」もかっこいい。中東ヒップホップの雰囲気を取り入れたトラックで、さりげない5拍子のリズムは雰囲気満載。
(5)「Only Me」はソルトレイクシティのシンガー、アンジー・ペティ(Angie Petty)の歌唱力も聴きどころ。イスラエル・プログレシーンを代表する鍵盤奏者エレズ・アヴィラム(Erez Aviram)との共作曲だ。
(6)「Through My Mind」はShwesmoが初めて作ったエレクトロニカの曲が元となっており、エンディングではロン・ウォーブルグ(Ron Warburg)の電気的に増幅されたトランペットがフィーチュアされている。
ラストの(7)「Warning Letter」はヨエル・ゲニン自身やヨゲフ・ガバイもメンバーとして所属するイスラエルのメタル/プログレバンド、Distorted Harmony をフィーチュアした楽曲で、バンドサウンドを軸にしつつ適度にエレクトロ・ミュージックをまぶした楽曲となっている。
Shwesmo プロフィール
イスラエルで生まれ育ったShwesmo(Yoel Genin)は幼少時からピアノ、ドラム、トランペットを学んだが、最終的にはギタリストの肩書きを持った。ティーンエイジャーの頃からいくつかのプログレッシヴ・ロックバンドで演奏し、名門校リモン音楽学校に入学、のちに提携するバークリー音楽大学に留学というイスラエルのジャズ・ミュージシャンのエリートコースを歩んでいる。
バークリーではいくつかの作曲賞を受賞。2018年にはドラマーのヨゲフ・ガバイらと共にHAGOというプログレッシヴ・メタル系バンドを率いアルバム『HAGO』でデビュー。
この頃から電子音楽にも傾倒し、Shwesmo名義でいくつかの作品をリリース。
中東音楽とジャズ、プログレ、メタルの融合を軸にジャンルの境界に捉われないユニークな活動を行なっている。
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