メタル/プログレ/ジャズ/エレクトロ…ジャンルの境界を壊す二人の鬼才による驚異の音楽

Yogev Gabay & Shwesmo - Binary Farm

イスラエルの音楽家二人による才気煥発のEP『Binary Farm』

米国ボストンで活躍する凄腕ドラマー、ヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)と、NY拠点のギタリスト/プロデューサー、Shwesmoことヨエル・ゲニン(Yoel Genin)による双頭名義の2019年作EP『Binary Farm』はエレクトロニカ、ジャズ、プログレ、イスラエル音楽、アフリカ音楽、インド音楽などが複雑に絡み合いながら融け込むジャンル分け不可能な最先端音楽。これがもう最高にかっこいい。

(1)「Gnawhat?」はタイトルからして西アフリカの民族音楽グナワ(Gnawa)にインスパイアされたものだろうが、ダブステップ的な音作りのエレクトロニカにヨゲフ・ガバイの超絶生ドラムが絡み、聴いたこともないようなカオスなサウンドを生み出している。メタル/プログレを想起させる激しいギターもあり、ちょっと衝撃が凄すぎる曲だ。

(1)「Gnawhat?」
ヨゲフ・ガバイが契約するドイツのシンバルメーカー、マイネル(Meinl Cymbals)の宣伝も兼ねて制作されたビデオで、動画の最後ではシンバルセットの解説も。

(2)「Digital Elephants」はカリフォルニア生まれのインド系ヴォーカリスト、ロヒス・ジャヤラマン(Rohith Jayaraman)とイスラエルのパーカッション奏者イシャイ・アフターマン(Yshai Afterman)をフィーチュアし、ヨゲフ・ガバイが得意とする一小節のなかで様々な譜割りを行う変幻自在のリズムを披露。ロジカルにリズムを追求する彼ならではの凄まじい演奏で魅せる。

インドのボル(口タブラ)で始まる(2)「Digital Elephants」。
ドラマー、ヨゲフ・ガバイのリズムへの鋭い感覚が垣間見える。

本作EPは5曲入りだが、どの楽曲も素晴らしい個性を放つ。
二人ともジャズやプログレといった高度な音楽性と、メタルやロックの荒々しさを併せ持った上に、最先端のエレクトロまで消化吸収してきたが、音楽的経験とセンスをもってこれらの素材をこれまでにない形で融合し示してみせた感がある。
これは傑作と呼んで良いのではないだろうか。ぜひフルアルバムも聴いてみたいところだ。

二人の持つ個性が見事に融合した作品

今作はリズムを追求するヨゲフ・ガバイと、ギタリスト/作曲家として出発し近年エレクトロニカに傾倒するヨエル・ゲニンという二人の音楽家の強烈な個性(長所)がうまく重なり、1+1が2どころか、数十倍にもなるような効果を生んでいるように思える。

それぞれのプロフィールを紹介しよう。

ドラム奏者のヨゲフ・ガバイ(Yogev Gabay)はイスラエル生まれ。ロック、メタルからジャズ、エレクトロニック、ポップスなどあらゆるジャンルで引っ張りだこのセッションドラマーで、イスラエルの数多くのプログレバンド(Distorted Harmony、Systema Teleion、Anakdota、Heathens など)で活躍。アゼルバイジャンのピアニスト、エミル・アフラスィヤブ(Emil Afrasiyab)とともにバクー国際ジャズフェスティヴァルにも出演経験がある。
のちに米国のバークリー音楽大学で学位を取得し、自身のYouTubeチャンネルでは様々なプログレ系楽曲の複雑なリズムを分かりやすく解説したり、マスタークラスを開催するなど、現場と教育の第一線で活躍を続けている。

ギターとエレクトロニック担当のヨエル・ゲニン(Yoel Genin)はイスラエル出身で現在はニューヨークを拠点に活動しており、中東の音楽やメタル、プログレなどをエレクトロニカと融合するスタイルが特徴的。
イスラエルのリモン音楽学校で学んだ後、米国のバークリー音楽大学に留学。作曲でタッド・ダメロン(Tadd Dameron)賞とアレックス・ウラノウスキー(Alex Ulanowski)賞を受賞している。
HAGOというプログレッシヴ・メタル系バンドを率い2018年にアルバム『HAGO』でデビュー。このバンドにはヨゲフ・ガバイもドラムで参加している。
電子音楽に傾倒したのはその頃からで、Shwesmo名義でいくつかの作品をリリース。ジャンルの境界に捉われない活動で注目されている。

(4)「Hamsa Beat」のMV。中東に伝わる手の形をしたお守り「ハムサ」がテーマになっている。
ガイ・バーンフェルド(Guy Bernfeld)がビートボックスでゲスト参加。

Yogev Gabay – drums
Shwesmo (Yoel Genin) – guitar, electronics

Guests :
Rohith Jayaraman – vocal percussion (2)
Yshai Afterman – percussion (2)
Ronen Shmueli – keyboard (3)
Guy Bernfeld – beatbox(4)

関連記事

Yogev Gabay & Shwesmo - Binary Farm
最新情報をチェックしよう!