多彩な音楽的影響を窺わせるAri Erev新譜『Close to Home』
イスラエル・テルアビブで活動を続けるベテラン・ピアニスト、アリ・エレフ(Ari Erev)。2021年の新譜『Close to Home』はピアノトリオを軸に、“コーエン三兄弟”の長兄ユヴァル・コーエン(Yuval Cohen)やNYを拠点に活躍するフルート奏者ハダー・ノイバーグ(Hadar Noiberg)を迎えた温かな手触りの素敵なジャズだ。
大半はアリ・エレフのオリジナル曲だが、(1)「Israeli Story」や(2)「Playground」をはじめブラジル音楽(特にボサノヴァ)に影響された曲が多く、全体的に聴きやすく軽やかなジャズという印象。ブラジルのピアニスト、デボラ・グルジェル(Débora Gurgel)作曲の(6)「Para Sempre」やジョビンの(11)「Olha Maria」のブラジル産楽曲のカヴァーに、さらにはキース・ジャレット(Keith Jarrett)の(8)「So Tender」やポール・サイモン(Paul Simon)がサイモン&ガーファンクル解散後のソロで発表した名曲(12)「Still Crazy After All These Years」など、幅広く世界中の優れた音楽を吸収したプレイスタイルが魅力的な作品に仕上がっている。ゲストで数曲に参加しているハダー・ノイバーグのフルートもそよ風に運ばれてくるような極上の音で素晴らしい。
アリ・エレフはイスラエルで生まれ育ち、最初はクラシックのピアノを習い、ジャズは17歳から始めた。音楽に関わる最初のきっかけはアマチュアのピアニストである父親の存在だったという。
ビル・エヴァンス、ケニー・バロン、フレッド・ハーシュなどの繊細なピアニストに通じる叙情性や、ミシェル・カミロやミシェル・ペトルチアーニを彷彿させる情熱的な演奏を併せ持ち、NYのサックス奏者ジョエル・フラーム(Joel Frahm)をフィーチュアした『A Handful of Changes』(2012年)や、ユヴァル・コーエンのソプラノサックスを迎えた『Flow』(2016年)といった代表作で知られている。
Ari Erev – piano
Assaf Hakimi – bass
Gasper Bertoncelj – drums
Gilad Docrecky – percussion
Yuval Cohen – saxophone
Hadar Noiberg – flute