ディエゴ・スキッシ・キンテート『Te』:スピネッタの芸術観に触発された類稀なアート・ジャズ

Diego Schissi Quinteto - Te

芸術の精神を伝えるDiego Schissi Quinteto『Te』

アルゼンチンのピアニスト/作曲家、ディエゴ・スキッシ率いるディエゴ・スキッシ・キンテート(Diego Schissi Quinteto)の2021年新譜 『Te』は、(1)「Árbol」から驚きの連続だ。ジャンルは“ジャズ”か“アヴァンギャルド”か。少なくとも、彼らが分類されがちな“タンゴ”のイメージではない。

それもそのはず、今作はアルゼンチン・ロックの伝説的存在ルイス・アルベルト・スピネッタ(Luis Alberto Spinetta)に強くインスパイアされた作品なのだ。
アルバムに収められた19曲のタイトルは全て、スピネッタがペスカド・ラビオソ(Pescado Rabioso)名義で発表した『Artaud』(1973年)に収録されていた46の独立した単語で構成された曲「Por」に登場した単語から採用されている。スピネッタが12弦ギターで弾き語ったこの曲はフランスの詩人/劇作家アントナン・アルトーの創作に着想を得ており、その魅力的な個性ゆえに孤独を感じていた芸術家たち──37歳の若さで自殺した画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホや、史実では初めて登場するトランスジェンダーといわれる3世紀のローマ帝国皇帝ヘリオガバルスら──への讃歌でもある。

ディエゴ・スキッシがそうした物語に深く深く想像を巡らせたことを想えば、今作のいささか前衛的とも思える作風への疑問はなくなる。このアルバムの音楽ははっきり言ってとてつもなく抽象的だ。既存の何かには当てはまらないジャンルの音楽だ。
音楽や絵画、あるいは人の生き様といった芸術は抽象的だからこそ、具体的で説明的なもの以上の価値が生まれる。スピネッタがアルゼンチンの激動の社会に生きていた約50年前に言わんとしていたことを今に伝えるという意味でも素晴らしく価値のある作品のように思う。

(2)「Riel」

ディエゴ・スキッシ・キンテートの音楽から感じられる言葉では表せない魔法については、ほかにも多くの方が発信している。一部をリンクするので、ぜひそちらも参照いただきたい。

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クリバスとの共演ライヴコンサートも開催!

ディエゴ・スキッシ・キンテートは12月10日(日本時間12月11日9:00)に、こちらもコトリンゴとの共演などで広く知られるアルゼンチンを代表するバンド、クリバス(Cribas)との初めての共演ライヴをブエノスアイレスで実施。全世界にストリーミング配信も行われ、日本では下記サイトからチケットを購入することで12月31日まで視聴することができる。

彼らがどんな新しい音を聴かせてくれるのか、今から楽しみでしょうがない!

▷チケット販売ページ
https://cribas-diego-schissi-quinteto.peatix.com/view

Diego Schissi Quinteto :
Diego Schissi – piano
Guillermo Rubino – violin
Santiago Segret – bandoneon, voice
Ismael Grossman – guitar
Juan Pablo Navarro – contrabass

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