フアン・フェルミン・フェラリス、ソロ名義の傑作
現代アルゼンチン音楽を代表するバンド、クリバス(Cribas)のヴォーカリスト/ピアニストのフアン・フェルミン・フェラリス(Juan Fermín Ferraris)の2019年作『35mm』は、私が今年出会ったアルゼンチン音楽の中でも特も気に入って繰り返し聴き続けた作品だ。
彼が所属するバンド、クリバスはフォルクローレ寄りのサウンドで人気だが、このソロ名義でのアルバムはジャズや現代音楽の成分が強く、効果的に用いられるサンプリングも相まってとても新鮮な音楽を聴かせてくれる。
バンドはピアノ、ベース、ドラムス、クラリネットのカルテットに加え、効果音や子供の声、街角の音などのサンプリングが効果的に組み合わされている。
写真や映画のフィルムの規格をモチーフにしたタイトル通り、聴き手に様々な情景を思い起こさせる映像的な音楽が続く。
複雑に作曲され、端正に演奏される音楽は北欧の名バンド、エスビョルン・スヴェンソン・トリオ(Esbjörn Svensson Trio, E.S.T.)をも彷彿とさせる。
フアン・フェルミン・フェラリスは1992年生まれの若手ピアニスト/ヴォーカリスト。2014年にアルバム『La Hora Diminuta』でデビューを飾ったバンド、クリバス(Cribas)のメンバーとして、日本の音楽家コトリンゴとツアーなどで共演したことでも知られる。