2008年にイスラエル国内限定リリースしていたアヴィシャイ・コーエンの“初ヴォーカル作品”
ベーシストのアヴィシャイ・コーエン(Avishai Cohen)が2008年にイスラエル国内限定でリリースしたアルバム『Sensitive Hours』(ヘブライ語原題:Sha’ot Regishot)が2021年12月10日、デジタル・リイシューされ全世界でサブスク配信開始された。
時期的にはシャイ・マエストロ(Shai Maestro, p)、マーク・ジュリアナ(Mark Guiliana, ds)とのトリオでの名盤『Gently Disturbed』と同時期のリリースで、この二人も本作に参加しているほか、パーカッションのイタマール・ドアリ(Itamar Doari)、フルート奏者イラン・サーレム(Ilan Salem)、女性歌手カレン・マルカ(Karen Malka)といったイスラエルを代表するアーティストが参加。全曲がアヴィシャイ・コーエンによる作曲で、幼少期からインスピレーションを受け続けてきたイスラエルの伝統音楽に深く根ざした、まさに彼の長いキャリアの中でも最もルーツを強く感じさせる興味深い作品となっている。今でこそアヴィシャイ・コーエンは“歌うベーシスト”の印象が強いが、ヘブライ語でヴォーカルをとるこの作品が彼にとって初めて本格的に歌った作品のようだ(のちに2017年に『1970』というヴォーカル・アルバムを発表しており、イスラエル国外ではこの作品がアヴィシャイの初めての歌モノと認識されていた)。
肝心の内容は、個人的には好みの超ど真ん中で、はっきり言って英語で歌われたことによってアヴィシャイらしさが半減していた『1970』よりもずっと良いし、これを今の今まで“未発表”のように隠し続けてきた意味が分からない。変拍子、民族楽器、微分音、中東の旋律、そしてヘブライ語…アヴィシャイ・コーエンの音楽はどう聴いてもこれが自然だ。ヴォーカルだけでなく勿論ベース・プレイも堪能できるし、本当にもっと早く聴きたかった。でも、解禁してくれてありがとう!
アヴィシャイ・コーエンは彼のFacebookでこの作品への想いを語っている。
この作品が自分のもっとも深い感情と結びついたものであること、物心ついた頃から家で母親が心地良い声で歌うのを聴き、人間にとって歌うことはとても自然なことだと実感したこと、金曜日の夜には故人である祖父がシャバット(ユダヤ教の安息日)に捧げる祈りの声を思い出すこと…。
秀でた才能を持つジャズ・ベーシストとして、そして“イスラエル・ジャズ”の先駆者として世界にその名を轟かせてきた巨匠の、最も露わな心の内側を覗き見ることができる掛け値なしの最高傑作だ。
Avishai Cohen – bass, vocals
Mark Guiliana – drums
Shai Maestro – piano, keyboards
Itamar Doari – percussion, vocals
Karen Malka – vocals
Eyal Heler – guitar
Ilan Salem – flute
Oded Meir – trombone
Rea Bar-Ness – percussion, Vocals