現代ジャズとスコットランドの伝統音楽が混淆するピアノトリオ
洗練された現代ジャズとスコットランド伝統音楽の融合で独自の個性を発揮するピアニスト、ファーガス・マクリーディー(Fergus McCreadie)のトリオによる3枚目の新譜『Forest Floor』がリリースされた。前2作と同じくメンバーはベースのデヴィッド・ボーデン(David Bowden)、ドラムスのスティーヴン・ヘンダーソン(Stephen Henderson)という布陣で、広がりのある雄大なサウンドスケープを描き出す。
このトリオはとにかく音の密度が濃くて最高だ。(1)「Law Hill」からファーガス・マクリーディーは華麗な指さばきで鍵盤の上を無邪気に全速力で駆け回るし、ベースはその大地を支え、ドラムスの細やかなリズムは動きのある背景を彩る。広大な自然の中で生命力を爆発させる風景が目に浮かぶようで楽しい。
(2)「The Unfurrowed Field」のテーマはよりスコットランドのフォークミュージックを意識する。キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットを彷彿させる奇妙な懐かしさと心の安らぎ。
曲名にもあるように、彼らの曲は自然からインスピレーションを得たものがほとんどだ。ファーガス・マクリーディーのトリオが奏でるアンサンブルは、物質主義に流されがちな社会の中で、いっとき自然の中へと心を戻してくれるような気がする。
スコットランドの絶景をこの目で見に行きたい──。
そんな強い憧憬を呼び起こす素敵な音楽だ。
スコットランド屈指のピアニスト
ファーガス・マクリーディー(Fergus McCreadie)は1997年スコットランドの小さな町・ジェームスタウン生まれ。幼少期からピアノの才能を示し、12歳の頃にはすでにピアニストの道を決めていたという。15歳で「U17s Young Scottish Jazz Musician award」を受賞。翌年も受賞し、同賞創立以来初の2連覇の偉業を成し遂げた。
デビュー作となった『Turas』(1998年)は自主制作盤ながら話題を呼び、「議会ジャズ賞(Parliamentary Jazz Awards)」でジャズアルバム・オブ・ジ・イヤーに輝いた。
もっとも影響を受けたピアニストはキース・ジャレットとのこと。
Fergus McCreadie – piano
David Bowden – double bass
Stephen Henderson – drums