空間的な拡がりを感じるキケ・シネシ&ファクンド・フェレイラ
アルゼンチンを代表するギタリスト/作曲家キケ・シネシ(Quique Sinesi)と、若手パーカッション奏者ファクンド・フェレイラ(Facundo Ferreira)による初めてのデュオ作品『Otro Lado』がリリースされた。タイトルは“Other Side”、つまり“もうひとつの側面”“反対側”といった意味のスペイン語だ。
耳を澄ませば息遣いも聴こえる、生々しい音楽の記録である。サンバ(zamba)、ビダラ、ミロンガ、チャカレーラ、カンドンベといったアルゼンチンの伝統的な音楽をクラシックやジャズと優しく融合した豊かな音が広がる。
名曲(1)「Otro Día」、(7)「Alta Paz」など、キケ・シネシの人気曲も7弦ギターとパーカッションの親密な語らいで新たに蘇る。キケ・シネシのギターが世界最高峰の素晴らしさなのは今更言うまでもないが、ファクンド・フェレイラというあまり聞き慣れない打楽器奏者の音も、音楽を時間軸だけでなく空間的に捉え深みをもたらしている。
アルゼンチン音楽の土壌が生んだ、フォルクローレ・ジャズの素晴らしい作品だ。
Quique Sinesi プロフィール
キケ・シネシ(Quique Sinesi)は1960年生まれのギタリスト/作曲家。1980年代よりプロの音楽家としての活動を開始し、これまでに発表した作品は数知れない。
ピアニストのパブロ・シーグレル(Pablo Ziegler)と共演した2003年のアルバム『Bajo Cero』ではラテングラミー賞も受賞している。
また、1996年に発表したアルバム『Cielo Abierto』の表題曲「Cielo Abierto(澄みきった空)」はクラシックギターの定番曲としても人気で、数多くのギタリストによってカヴァーされている。
Viuda e Hijas de Roque Enroll のオリジナルメンバーとして知られるロック歌手/ベーシストのクラウディア・シネシ(Claudia Sinesi)は実妹。
Facundo Ferreira プロフィール
ファクンド・フェレイラ(Facundo Ferreira)はブエノスアイレス生まれで、クラシックの打楽器や南米の打楽器を習得。アルゼンチン音楽のほか、アフロキューバンやブラジル音楽にも精通し、カホンを研究するためにペルーにも旅をしている。
これまでにノラ・サルモリア(Nora Sarmoria)らの作品にパーカッショニストとして参加。2021年には自身のグループ名義でアルバム『Continuidades』をリリースし、そこにはキケ・シネシも参加している。