アレサンドロ・ペネッシ&ファビオ・ペロンの極上ショーロ・デュオ
弦楽器の美しい響きを堪能できる最高の音楽だ。
ブラジルの7弦ギター奏者アレサンドロ・ペネッシ(Alessandro Penezzi)と、バンドリン奏者ファビオ・ペロン(Fábio Peron)の初のデュオ作品『Alessandro Penezzi e Fábio Peron』。
音楽大国ブラジルの象徴的存在、ドミンギーニョスを称えた(1)「Chorinho pra Dominguinhos」から連なる10曲はどれも愛おしいほどの音の美しさに溢れている。弦と木の振動、共鳴。アレサンドロ・ペネッシが爪弾く7本の弦と、ファビオ・ペロンが撫でるように弾く10本の弦には誇張や飾り気の類はなく、ただただ音楽という時間芸術にしか成しえない穏やかな空間を作り、密度の濃い豊かな流れを生む。大袈裟ではなく、“魔法のような”という表現を用いたくなるほどの素敵な時が流れる。
収録曲は全て二人のオリジナルで、大半は今作のために書き下ろされたもの。古典的なショーロ、ワルツの技法が用いられており、ガットギターとバンドリンだけという編成の室内楽的な心地良さも効果的だ。
じっくり耳を傾けるのも良し、BGMとして空間を彩るも良し。
最小編成のショーロ音楽として、長く重宝しそうなアルバムである。
7弦ガットギター奏者 Alessandro Penezzi プロフィール
7弦ヴィオラォン(通常のヴィオラォン=ガットギターは6弦)のアレサンドロ・ペネッシは1974年サンパウロ州ピラシカバ生まれ。ギターだけでなくバンドリン、バンジョー、カヴァキーニョ、コントラバスなど複数の弦楽器やフルートなどの横笛、パーカッションなど様々な楽器をマルチにこなす生来の音楽家だ。
7歳の頃にギターを始めたがその上達のスピードは早く、10歳の頃には12歳と偽ってクラシックギター教師の音楽教室に通い始めた(12歳というのはその教室で習える年齢の下限だった)という逸話も残っている。
ショーロを軸に活動する彼は、同じグループで活動していたこともあるヤマンドゥ・コスタ(Yamandú Costa)、ホジェリオ・カエターノ(Rogerio Caetano)らとともに現代最高峰のギタリストとして知られている。
10弦バンドリン奏者 Fábio Peron プロフィール
サンパウロの音楽シーンでも最も才能ある若手バンドリン奏者として知られるファビオ・ペロンは、5歳の頃から演奏を始めている。
両親はサンパウロのバンドリン奏者イザイアス・ブエノ・ヂ・アルメイダ(Izaías Bueno de Almeida)のバンドで活動したヴェラ・キュリー(Vera Cury)とイタロ・ペロン(Italo Perón)で、ファビオ自身もイザイアスと共に過ごす時間が長く、この経験がバンドリン奏者としての道の決定打となったようだ。
主に5コース10弦のバンドリン(通常のバンドリンは4コース8弦)を用い、ショーロを基軸としながらも世界中のさまざまな時代の音楽を研究してきた彼の演奏は柔軟性があり、アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)らブラジルを代表するベテラン音楽家からも注目を浴びる存在となっている。
Alessandro Penezzi – 7-string guitar
Fábio Peron – bandolim