無限の可能性を秘めたコントラバスと女声ヴォーカルの前衛ジャズ・デュオ2nd『reTORNAR』

Magalí Sare & Manel Fortia - reTORNAR

Magalí Sare & Manel Fortia 新作『reTORNAR』

フルートやピアノ、パーカッションなどのマルチ奏者であり、類稀な声を持つ歌手のマガリ・サレ(Magalí Sare)と、コントラバス奏者マネル・フォルティア(Manel Fortia)のデュオによる第二作『reTORNAR』。二人の高い芸術性のなかで、即興のアイディアがこれでもかと溢れる傑作だ。

今作は2020年の初デュオ作『Fang I Núvols』の続編という位置付けで、収録曲もカヴァーがほとんどを占める。アルバムタイトルは二人の“回帰”の意味のほか、伝統曲や古い歌曲への再訪を表しており、とりわけカルロス・ガルデル(Carlos Gardel)とアルフレド・レ・ペラ(Alfredo Le Pera)の作によるアルゼンチン・タンゴ(1)「Tornar」をアレンジしたことがアルバムの構想にまで発展したことにも由来している。この曲は原題「Volver」で、ここでは原曲のスペイン語をカタルーニャ語で歌い直す。

(1)「Tornar」

アルバムには相当に作り込まれた構成の曲や、即興的な曲が混在するが、どれもリラックスした雰囲気で出力されており二人が心から音楽を楽しんで演奏している様子が伝わる。ぜひ下記に貼った(5)「Roseret」のTV番組出演時のライヴ演奏動画を観てほしいが、ベース1本を弦楽器だけでなくパーカッションとしても扱い、そのグルーヴの中から無限の創造力を生み出す様は素晴らしくアーティスティックだ。

(5)「Roseret」

(8)「Modinha」はブラジルを代表するコンビ、アントニオ・カルロス・ジョビン(Antônio Carlos Jobim)とヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinicius de Moraes)による名曲だ。原曲もボサノヴァというよりクラシックからの強い影響を感じさせる楽曲だが、ここでのアレンジも実に素晴らしく、コントラバスと女性ヴォーカルというフォーマットの可能性の広がりを感じさせてくれる仕上がりとなっている。

キューバの有名な民謡である(9)「Guantanamera」のカヴァーは凝りに凝ったアレンジが施されており必聴だ。5拍子の変幻自在のリズムは聴き慣れたこの曲を新鮮に蘇らせており、本作では唯一マガリ・サレのフルートも聴くことができる。

キューバを代表する歌曲のカヴァー、(9)「Guantanamera」

Magalí Sare – vocal, flute, percusson
Manel Fortià – contrabass
David Domínguez – percussion, drums

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