カンドンブレからアフロ・ブラジリアンのルーツを探求
ブラジルの土着宗教カンドンブレの精神性や音楽に魅了されたシンガー、イルマ・フェヘイラ(Irma Ferreira)のデビュー作『Em Cantos de Oriṣà』は、アフリカ系ブラジル人のルーツに対する彼女の飽くなき探究心の結晶のような作品だ。
カンドンブレは奴隷貿易とともにブラジルに持ち込まれたアフリカのヨルバ人の土着宗教がカトリックへの強制改宗や南米先住民族の精霊信仰の影響も受け独自の発展を遂げたもので、現在はバイーア州やリオデジャネイロ州を中心に約200万人が信仰していると言われている。トランスにより精神的な浄化を得るカンドンブレは、様々なアフロ・ブラジル音楽のインスピレーションの源泉となっており、ブラジル音楽の歴史や発展においても大きな影響をもたらしてきた。
信仰の特徴としてはオリシャ(Orixa)と呼ばれる神々が身の回りの万物にそれぞれ存在し、人々を守ってくれていると考えられており、それは日本の神道における“八百万の神”とも似通ったところがある。
聖職者や人々をトランス状態に導くカンドンブレの音楽の主役はアタバキ(atabaque)と呼ばれる打楽器(太鼓)だが、今作の主人公であるイルマ・フェレイラは打楽器よりも歌を重視した作品を創造した。アルバムの9曲は祈り(Àdúrás)と聖歌(Oríkìs)に大別され、海の神イエマンジャ(Iyemanjá)や鉄の神オグン(Ògún)などの神々に捧げられている。
全身を使って表現される、祈るような美しい歌がアルバム全編で繰り広げられる。
これはカンドンブレの美しさの一部を、伝統的な音楽と現代的な音楽の接点で表現する挑戦的な試みだ。
プロデュースはスウェーデン生まれ・バイーア在住のマルチ奏者セバスティアン・ノティーニ(Sebastian Notini)が務めている。
Irma Ferreira – vocal
Ogã Luan Badaró – perucussion
Ruan de Souza – guitar
Angélica Ferreira – chorus
Everton Neves – chorus
Luan Badaró – chorus
Jota Oliveira – chorus
Ari Haraldsson – wind instruments
Sebastian Notini – produce, other instruments