個人で楽しめるオーダーメイドの音楽。「子守唄」の作曲を依頼してみた【前半】

読者のみなさんは「作曲」についてどんなイメージをお持ちだろうか。趣味や仕事で普段から曲を作っている方もいれば、自分には縁遠い特殊技能だという方もいるだろう。

では、自分や身内で楽しむための音楽を、プロの作曲家にオーダーできるとしたら?

この記事では、一般人の筆者が「子守唄」の作曲を個人で依頼した際の手続き、予算、感想などを紹介する。

作曲依頼の背景:生まれてくる子供に「子守唄」を贈る

大人2人で長く暮らしていた世帯に、子供が1人増えることになった。

やがて成長して巣立つ子供にとって、何か一緒に楽しめるもの、小さな支えとなるものを…と考えた時に、ふと「子守唄」に思いあたった。

筆者とパートナーは、この10年ほどで何度か大きな引っ越しを経験してきた。ここしばらくは同じところに住み続けているものの、生まれてくる子供も、これから大きな環境の変化を経験していくかもしれない。

故郷を持たない可能性のある子供が心の中に携えられる原点として思い浮かんだのが、歌だった。

身近な大人の声、鳥の鳴き声や葉擦れの音、生活音、ラジオやテレビから流れてくる音楽。子供の頃に聞いた音は、原風景として心の中に長く残る。

依頼先:片山柊 氏(ピアニスト/作曲家)

とはいえ、筆者もパートナーも、歌や楽器のささやかな経験はあるものの、曲を作ることに関してはまったくの素人だ。

そこで作曲を依頼したのが、ピアニスト・作曲家で、オルタナティブポップデュオ「東京○X問題(トウキョウマルバツモンダイ)」でも活動する片山柊(カタヤマシュウ)氏。


片山 柊 | カタヤマシュウhttps://syukatayama3.wixsite.com/syukatayama

X/Twitter: @syu_katayama

Threads: @syukatayama


片山氏とは、筆者の友人が主宰する音楽朗読劇プロジェクト(「夢の浮橋」制作企画)を通じて面識があったのだが、直接やりとりをするのはこれが初めて。

直接の知人でなくとも「ほんとに、気軽に依頼していただけたら」とのことだった。

依頼前の見積もり:費用、期間、伝達・相談事項

費用(委嘱料金)

プロに作曲を依頼(委嘱)する上で気になるのが料金。ヨーロッパなどでは、統一規格による作曲料金表が用意されている場合もあるという。

片山氏には、実際の依頼に入る前にメールで以下の見積もりをお願いした。

見積もり項目

(1)子守唄の作曲
  • ピアノ伴奏つき
  • 【前奏、歌詞部分、間奏、歌詞部分リピート(= 2番)、後奏】を合わせて1分程度
(2)楽譜
  • PDF版 + 紙(簡易製本)版の2バージョン

料金

気になる料金は、我々が見積もりをお願いした当時(2022年)で以下の通り。

(1)+(2)=4〜5万円

また、オプションで下記をつけることもできるとのことだった。

(3)演奏音源提供5万円

スタジオ録音料+歌手謝礼+3パターンの録音

  • 歌+ピアノ伴奏
  • メロディー歌唱(歌詞なし)
  • ピアノ伴奏のみ

見積もりをいただいた後、納品期間の確認希望事項の伝達(後述)をした上で正式に依頼を行った。 支払いは、半額を事前に振り込み、残りの半額を納品時にお支払いすることに。


料金の相場や依頼の流れについては、PTNA(ピティナ:全日本ピアノ指導者協会)のサイトに出ていたこちらのページも参考になった。

作曲家と協力して新しい曲を作りませんか? 〜委嘱《いしょく》のススメ〜

また、スキルの出品購入マーケット「ココナラ」など、依頼者・作曲者とも匿名で気軽に作曲を依頼できるプラットフォームもあるようだ。


期間

作曲期間は、他の案件や活動との兼ね合いで大きく変わりうるため、事前の確認が大切なところ。

我々の依頼時は、発注確定から2ヶ月後の日付をリクエストしてOKをいただいた。

この期間には、仮完成の段階での確認1回が含まれる

伝達&相談事項

依頼時にお伝えしたことは以下の通り。

歌詞(仮)

※ 実際の歌詞は伏せるが、このような長さだった(ひらがな36文字、4行。「○○○○」が子供の仮の名前)↓

○○○○● ●●●●●

●●●●● ●●●

●●●●● ●●●●●

●●●●● ●●●

長さ(演奏時間)

  • 現時点で歌詞は1番のみですが、今後2番、3番…と追加できるように、短い間奏&リピートをつけて作曲していただけると嬉しいです
  • 【前奏、歌詞部分、間奏、歌詞部分リピート(= 2番)、後奏】を合わせて1分程度と考えています

子供との生活の中で新しい歌詞を追加できたら楽しいかもしれないと考え、リピート部をリクエストした。

曲調

  • 長調が希望です

音域

  • 最大でE3からD4まで

普段の生活の中で歌う曲になるため、自分たちが地声で無理なく出せる音の範囲をお伝えした。

音域の測定にはアプリを使用。もちろん、チューナーや手近な楽器などでも。


アプリの例

音程チェッカー チューナーやボイストレーニングに。音階を表示

https://apps.apple.com/jp/app/pitch-checker/id1490398292


契約関係

  • メロディーや伴奏はお仕事の実績として公開していただいてかまいません
  • 歌詞は公開しないでほしい
  • 依頼者の名前は公開しないでほしい

連絡先

  • こちら(※筆者)のメールアドレスまでご連絡ください。ご相談事項が生じた場合、Zoomなどのビデオ通話も可

実際には文字ベースのやり取りだけで完結したが、細かいニュアンスを文字で伝えにくいという方は、ビデオ通話等で一度話してみるのもよいかもしれない。通話時に、依頼者の普段の話し方や声質を作曲家サイドが実感できるという利点もある。


こうして事前の打ち合わせは完了し、料金の半分をお支払いして作曲がスタートした。

記事の後半では、子守唄完成までの流れと感想を紹介する予定だ。

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