洗練されたリズムとハーモニー、日本語と英語が混ざる新感覚のSSWメイ・シモネス 必聴の新作EP

Mei Semones - Kabutomushi

日系ギタリスト/SSWメイ・シモネス、洗練された2nd EP

アメリカ合衆国ミシガン州アナーバー出身、現在はNYブルックリンで活動する女性ギタリスト/SSWメイ・シモネス(Mei Semones)。ジャズやブラジル音楽を軸にした卓越したギター演奏と洗練されたリズムやハーモニーの感覚、英語と日本語で歌う個性的で自然体のシンガーソングライター然とした佇まいが魅力の新進気鋭アーティストだ。彼女の最新EP『Kabutomushi』がとても良いので紹介したい。

日本人の母親(グラフィックデザイナーで、今作のジャケット・アートを描いている)をもつメイ・シモネス。4歳でピアノを始め、11歳からエレキギターを演奏。高校時代にジャズを始め、ボストンの名門バークリー音楽大学でジャズギターを学んだという経歴を持つ。彼女の音楽はジャズやボサノヴァ、(ごく少量だが無視できない)オルタナロックやJ-POPの影響が複雑に入り組んでいる。

バークリー在学中の2022年にEP『Tsukino』でデビュー。ジョン・コルトレーンやセロニアス・モンク、バド・パウエルのハーモニーを研究し、ウェス・モンゴメリーのギターに憧れ、ジョアン・ジルベルトのボサノヴァに強く惹かれ、サウンド面ではスマッシング・パンプキンズやニルヴァーナにも影響を受けている。日本のアーティストではリーガルリリー、yonige、青葉市子、君島大空、Lamp、tricotなどが好きだという。

(1)「Tegami」から個性的だ。明らかにボサノヴァから影響を受けているが、7拍子という独特のリズム。バークリーの友人が弾くストリングス・セクションがアレンジに華を添える。そして英語に混ざって歌われる日本語詞もとてもキュートだ。

(2)「Wakare No Kotoba」も複合変拍子が際立つ面白い構成の曲。ギターもテクニカルだが、それでもナチュラルに感じさせるのは彼女のヴォーカリスト/ソングライターとしての魅力が前面に出ているからなのかもしれない。

(2)「Wakare No Kotoba」

(3)「Takaramono」はほぼ全編が日本語で歌われる。強力なシンコペーションと、サビ部分ではやはり変拍子がアクセントとなっている。

(4)「Inaka」もそのタイトルとは裏腹にプログレッシヴなアレンジが楽しい。バンド演奏は生々しく、特にストリングスのパートはメイ・シモネスのヴォーカルと見事に調和し、このアルバムの素晴らしさを際立たせている。彼女が弾くギターにはグランジからの影響も僅かだが極めて印象的に感じられ、さらにその個性を際立たせる。

(4)「Inaka」

ラストはアルバム表題曲の(5)「Kabutomushi」。ボサノヴァをさらに洗練させたような7拍子の曲調と、日本での生活の思い出を歌う歌詞はまさに日本風のサウダーヂ。繊細な感覚が見事に音楽に反映された、とても印象的な楽曲に仕上がっている。

(5)「Kabutomushi」。MVは日本で撮影されている

Mei Semones – guitar, vocals
Noah Leong – viola
Claudius Agrippa – violin
Jaden Raso – bass
Ransom McCafferty – drums

Mei Semones - Kabutomushi
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