クアルテート・マオガニ、結成30周年を記念する新作
1994年に結成され、以来ジャンルを問わず“ブラジルの音”を表現し続けるギター・カルテット、クアルテート・マオガニ(Quarteto Maogani)。30周年の節目となる新作『Maogani Autoral』は、誰もが知る有名曲などはなく分かりやすさや派手さはないものの、真摯に音楽に向き合う彼ららしい美しく完璧なギター・アンサンブルに心を洗われるような素晴らしい作品だ。
年月の経過により結成時のオリジナルメンバーはカルロス・チャベス(Carlos Chaves)とパウロ・アラガォン(Paulo Aragão)の二人だけとなってしまったが、今作では新たにディオゴ・シリ(Diogo Sili)とルーカス・グララート(Lucas Gralato)が加入。演奏される曲は「マオガニの著作」というアルバムのタイトルどおり、すべてクアルテート・マオガニのメンバーもしくは元メンバーが作曲した曲ばかりが取り上げられ、さながら彼らのささやかだが輝かしい歴史博物館の様相だ。
カルロス・チャベス作曲の(1)「De Chaves à Xavier」に始まり、2005年に加入したマウリシオ・マルケス(Mauricio Marques)作の(11)「Scarlattilonga」までの45分間は南米のクラシック音楽、情熱的なスパニッシュ、そしてブラジルが誇るショーロなど多様な曲種で彩られ、それぞれが異なる種類のギターを操るカルテットの卓越したアンサンブルによって物語を観せるように演奏される。
新メンバーであるルーカス・グララート作の(4)「Copas fora」はA.C.ジョビンやバーデン・パウエルといったブラジル音楽の偉人たちのDNAを受け継ぐような楽曲で、アフロブラジル音楽を高度に洗練させた印象。
パウロ・アラガォン作の(7)「Quadrilha」はクラシカルなショーロの形式を採用しており、今作の中でも特に聴き馴染みやすい楽曲と言えるだろう。
Quarteto Maogani :
Carlos Chaves – requinto guitar
Lucas Gralato – 6-string guitar
Diogo Sili – 7-string guitar
Paulo Aragão – 8-string guitar