インドネシア伝統音楽を基調に、革新性も探求する現代のガムラン。ペニ・チャンドラ・リニ新譜

Peni Candra Rini - Wulansih

インドネシアのSSWペニ・チャンドラ・リニ新作『Wulansih』

インドネシア・ジャワ島の伝統音楽に根差しながら、独自の現代的な感性を持ったシンガーソングライター、ペニ・チャンドラ・リニ(Peni Candra Rini)の新作『Wulansih』。米国の民族音楽博士アンディ・マグロウ(Andy McGraw)やニューヨーク出身のチェロ奏者レスター・セントルイス(Lester St. Louis)らとともに作り上げた、“未来志向の伝統音楽”とも呼ぶべき素晴らしい作品だ。

アルバムに収録された8曲はインドネシアの多様な伝統音楽をベースに、現代の西洋音楽理論や音響芸術といった要素も加わり、実に色彩豊かに奏でられている。ギターやシンセサイザーといった西洋由来の楽器も使われているため、ガムラン特有の微分音が殊更強調されるものではないが、楽曲の構成や音階、歌唱法も個性的なものとなっている。

アルバムはシンセサイザーが深遠な音空間をつくり、イ・グスティ・プトゥ・スダルタ(I Gusti Putu Sudarta)による男声歌唱が神秘的に響く(1)「Estu」で幕をあける。
つづく(2)「Jenang Gula」は日本人にも馴染み深い琉球音階(長調の2度と6度を抜いた5音音階)と同じインドネシアのペロッグ音階が用いられており、どこか懐かしさを感じるとともに沖縄のインドネシアの興味深い音楽文化の共通点を知ることができる。

(3)「Pendar-Pendar」

ジャワのガムランは、宮廷音楽として発展し受け継がれてきたものだという。
ペニ・チャンドラ・リニによる今作は、ゆったりと悠久の時の流れを感じさせる穏やかさと精神的な深みを感じられると同時に、伝統の中に留まるだけでは満足しない進歩的な精神によって紡がれている。

(6)「Manik Jekantung」のライヴ演奏動画

Peni Candra Rini – voice
I Gusti Putu Sudarta – voice, gamelan
Andy McGraw – pinjo, cello, kalimba, gamelan, steel drum
Lester St. Louis – cello
Shahzad Ismaily – Moog, guitar
John Priestley – guitar
Curt Sydnor – synthesizer
Nat Quick – cak
Clover Dosier – cuk
Robert Andrew Scott – fiddle
Brian Larson – percussion
Jessica Zike – bass

Peni Candra Rini - Wulansih
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