ロドリゴ・G・パーレン&ウーゴ・ファトルーソによるデュオ作品
ウルグアイを代表する二人の音楽家、ロドリゴ・G・パーレン(Rodrigo G Pahlen)とウーゴ・ファトルーソ(Hugo Fattoruso)のデュオによる新作『Improntas』がリリースされている。ウルグアイ、ひいては南米を代表する音楽家二人が自身の楽曲を中心に、ほかにはビートルズなどカヴァーも交えて奏でる至高の作品だ。
アルゼンチンのSSWフィト・パエス(Fito Páez, 1963 – )初期の名曲である(1)「Giros」、そしてビートルズの(2)「Eleanor Rigby」はアルバムの最初のハイライトだ。リズムセクションを排した編成で奏でられるこれらの名曲はどこまでも美しく、そしていくらかの郷愁を感じさせる。ここにはジャズ、タンゴ、クラシックなどをごく自然に、空気のように纏った二人のレジェンドによる快演がある。
以降は二人それぞれのオリジナルを中心に展開する。アカ・セカ・トリオ(Aca Seca Trio)などがカヴァーしたことで知られるウーゴ・ファトルーソの名曲(4)「Hurry」、ロドリゴ・G・パレンによる美しく感傷的な(6)「Amor de Colibrí」など、ひとつひとつの楽曲が南米らしい瑞々しさに溢れている。
(5)「El Llorón」はアルゼンチン・タンゴの巨匠フアン・マグリオ(Juan Maglio, 1880 – 1934)のカヴァー。
Rodrigo G Pahlen 略歴
今作では専らハーモニカを演奏するマルチ奏者/作曲家のロドリゴ・G・パーレンは1977年に両親が亡命していたスイスで生まれ、12歳で故郷ウルグアイに戻るまでそこで過ごした。祖父はオーストリアの著名な作曲家/指揮者のクルト・パーレン(Kurt Pahlen, 1907 – 2003)、曾祖父はグスタフ・マーラーのお気に入りの伴奏ピアニストであったリヒャルト・パーレン(Richard Pahlen, 1874 – 1914)という家庭で、彼自身もクラシック音楽の影響を強く受けて育ち、2006年にバンドネオン奏者ラウル・ハウレナ(Raul Jaurena)とともに、ピアノ、バンドネオン、オーケストラの作品『Orquestango 3』を発表。
ジャンルや国籍に関わらず幅広い音楽性を身につけており、これまでにナナ・ヴァスコンセロス(Nana Vasconcelos)、ミノ・シネル(Mino Cinelu)、アドリアン・フェロー(Hadrien Feraud)、エルナン・ロメロ(Hernan Romero)、レシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)、ルベン・ラダ(Ruben Rada)など国際的なアーティストと多数共演。2013年のアルバム『One Way』はそうした多様な影響を独自のサウンドに昇華させた傑作として知られている。
Hugo Fattoruso 略歴
今作ではピアノとアコーディオンを演奏するマルチ奏者/作曲家のウーゴ・ファトルーソは1943年ウルグアイ・モンテビデオ生まれ。幼い頃より音楽を始めており、1956年に父アントニオと弟オズバルドとともに結成したトリオ・ファトルーソ(Trio Fattoruso)がプロとしての音楽活動の原点となった。
その後ジャズバンドに参加後、ビートルズの影響を受けたロックバンド・ロス・シェイカーズ(Los Shakers)で人気を博し、ウルグアイやアルゼンチンでその人気を確立。ウルグアイの伝統音楽カンドンベとロックの融合を試みるなど、南米音楽の発展に大きく寄与した。
1969年に弟オズバルドとともにアメリカ合衆国ニューヨークに移住。そこで結成したジャズ/フュージョンとカンドンベの融合を試みたバンド、オーパ(Opa)はブラジルの打楽器奏者アイルト・モレイラ(Airto Moreira, 1941 – )によって見出され、アイルトの傑作アルバム『Fingers』(1973年)の演奏に参加。のちにベリーニ(Bellini)によって世界的なヒット曲となった「Samba de Janeiro」の元ネタである「Tombo in 7/4」はクレジットではアイルト・モレイラ作曲となっているが、実際にはウーゴ・ファトルーソによって書かれている。
これまでにルベン・ラダ(Ruben Rada)やハイメ・ルース(Jaime Roos)といったウルグアイのミュージシャンたちのほか、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)、エルメート・パスコアル(Hermeto Pascoal)、シコ・ブアルキ(Chico Buarque)、ジャヴァン(Djavan)といった隣国ブラジルの著名な音楽家とも多数共演。さらには打楽器奏者ヤヒロトモヒロや歌手の松田美緒との共演など、日本でも広く知られたまさに“南米の至宝”。
Rodrigo G Pahlen – piano,harmonica, vocal
Hugo Fattoruso – piano, accordion, vocal
Patrick Petruchelli – percussion (3)