Calibro 35、新たな探求の幕開けを告げる『Nouvelles Aventures』
アナログ機材によるローファイな質感のサイケデリック&ファンキーなバンドサウンドを聴きたいなら、イタリアで大人気のシネマティック・ファンクバンド、カリブロ35(Calibro 35)に注目すべきだ。2007年の結成以降、多数のオリジナル・アルバムや映画のサウンドトラック制作などで絶大な人気を得て、イタリアの音楽シーンのある一辺をリードする存在となった彼らが2022年作『Scacco al Maestro, Vol. 1』、『Scacco al Maestro, Vol. 2』でのエンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone, 1928 – 2020)への無限の愛情の表明を経てリリースした最新作『Nouvelles Aventures』(2023年)は、変わらず勢いのある意欲的で素晴らしい音楽作品に仕上がっている。
ここで演奏されるオリジナルの楽曲は、これまでの彼らの活動のストレートな延長線上にある。すなわち、ファンク、プログレ、アートロック、オルタナティヴ・ジャズ、そして映画音楽など様々な音楽的要素を独自のレシピで混ぜ合わせた音楽だ。冒険的な姿勢、未知への探求は今も彼らの核となっていることは明らかだが、同時に多くの聴衆が彼らの音楽に期待することも深く理解している。本作ではそんなサウンドが展開される。
アルバムのタイトル(Nouvelles Aventures = 新しい冒険)は、15年間のバンドの成長を経て新しい冒険の準備ができているという理由から、ハンガリーの作曲家リゲティ・ジェルジュ・シャーンドル(Ligeti György Sándor, 1923 – 2006)1から拝借された。
- リゲティ・ジェルジュ…クラシック音楽で実験的な作品を多く残したハンガリー系オーストリア人の現代音楽作曲家。彼の楽曲は『2001年宇宙の旅』、『シャイニング』、『アイズ ワイド シャット』といった映画で使用されている。 ↩︎