- 2025-06-10
- 2025-06-09
サイケに尖るバイーア発の気鋭SSWジャジザ、アントニオ・ネヴィス・プロデュースの新作
ブラジルのSSW、ジャジザ(Jadsa)の2ndアルバム『big buraco』がリリースされた。非凡な才能で驚かせたデビュー作『Olho de Vidro』(2021年)から4年、今作はプロデューサーにリオの鬼才アントニオ・ネヴィス(Antônio Neves)を迎え、前作からより洗練・深化した極上のサウンドを聴かせてくれる傑作だ。
ブラジルのSSW、ジャジザ(Jadsa)の2ndアルバム『big buraco』がリリースされた。非凡な才能で驚かせたデビュー作『Olho de Vidro』(2021年)から4年、今作はプロデューサーにリオの鬼才アントニオ・ネヴィス(Antônio Neves)を迎え、前作からより洗練・深化した極上のサウンドを聴かせてくれる傑作だ。
優れた音楽を発表しながら、商業的に成功せず“異端”(maldito)と呼ばれたセルジオ・サンパイオ(Sérgio Sampaio, 1947 - 1994)への再評価の機運が高まっている。フェリピ・ヂ・オリヴェイラ(Felipe De Oliveira)の新譜『Velho Bandido』もまた、セルジオ・サンパイオへのトリビュートだ。ロックは、サンバの精神は“死んだ”のか?本作は、その答えを探る問題作だ。
ブラジル北東部レシーフェ出身のSSW、フライラ・フェホ(Flaira Ferro)の新作『Afeto Radical』。当サイトが2023年のベスト・アルバムに挙げたクララ・コエーリョ(Clara Coelho)とのデュオでたおやかな感性が発揮された『Áua』と比較すると、より彼女の音楽的なルーツであるレシーフェに根付く豊かな音楽文化が反映された作品となっている。
ブラジル・ペルナンブーコ出身のSSW、イゴール・ヂ・カルヴァーリョ(Igor de Carvalho)の3枚目のスタジオアルバム『O Melhor Lugar da Praia』。アルバムはグスタヴォ・ルイス(Gustavo Ruiz)がプロデュースし、その姉であるトゥリッパ・ルイス(Tulipa Ruiz)や、カエターノ・ヴェローゾの息子モレーノ・ヴェローゾ(Moreno Veloso)、歌手ナ・オゼッチ(Ná Ozzetti)、鍵盤奏者ベンジャミン・タウブキン(Benjamim Taubkin)らブラジルを代表する幅広い世代の音楽家たちが参加。エレクトロニックも駆使しながらトロピカリアの系譜から繋がる現代感覚のサイケロック/ロマンティック・ポップを展開する。
イスラエル出身、米国を拠点とするジャズ/プログレシーンで強い存在感を示すジャズロックバンド、カダワ(Kadawa)が2枚目のフルアルバム『Post Graduation Fees』をリリースした。今作はオーヴァーダビングを多用するなどトリオのコア・サウンドを拡張した野心的な作品で、尽きない音楽的探究心によって培われた技巧と芸術性、そして彼ら特有のウィットに富んだ表現力が炸裂する。合わせ鏡によって無限の深淵を覗かせるジャケットが象徴するように、独特の深みを持った傑作だ。
イスラエル・テルアビブを拠点とする6人編成のバンド、シャテライツ(Şatellites)が2ndアルバム『Aylar』をリリースした。今作は2021年リリースのデビューアルバム『Şatellites』で確立した70年代のアナトリアン・ロックに強い影響を受けた独創的なスタイルをさらに発展させた作品となっており、西洋音楽には見られない独特の音階や不穏に渦巻くサイケデリックなグルーヴが面白い作品だ。
ブラジル・リオデジャネイロから、また新たな狂才が現れた。リオ郊外のバイシャーダ・フルミネンセで育った1998年生まれのSSW、カシュトリーニョ(Caxtrinho)のデビューアルバム『Queda Livre』。サンバやカンドンブレといったブラジルの伝統を確かに受け継ぎながらも、それらの原型をほとんど留めないほどに弄り回し、強烈なファズの効いたギター、ドラッグに塗れたジャズを大鍋にぶち込んで掻き混ぜたような凄まじい音楽だ。
ノルウェーのプログレッシヴ・ジャズバンド、クロコファント(Krokofant)の6枚目のアルバム『6』。彼らのアルバムはもうずっとこんな感じの安易なネーミングで、それがバンドの価値を貶めてしまっていないか心配になるが、音楽自体は紛れもなく本物。70年代のプログレやジャズロックに強く影響された最高に熱い作品だ。
特徴的な編成のイスラエルの6人組ジャズ・バンド、ババ・ガネーシュ(Baba Ganesh)の新作EP『Firefly』がリリースされた。『Masala』(2020年)、『Siddhartha's Lost Hamsa』(2021年)につづく3枚目のEPとなる。
インドネシアのシンガー・ソングライター、ペニ・チャンドラ・リニ(Peni Candra Rini)の新譜『Wani』は、おそらく多くの人にとって今まで聴いたどんな音楽よりも新鮮なリスニング体験をもたらしてくれるだろう。ギターやベース、ドラムスといった軸となる楽器編成は間違いなく西洋のロックに影響を受けているが、西洋音楽の理論では説明が不可能なガムランの音階、伸縮自在のリズムが一見カオスなようでいて、聴けば聴くほど神秘的な美しさを秘めた宝石の原石ような魅惑的な輝きを放つ。
トーゴ出身で米国ワシントンD.C.に20年間住み、現在はトーゴの首都ロメとワシントンD.C.を行き来するシンガーソングライター/ギタリストのドゴ・デュ・トーゴ(Dogo Du Togo)が率いるバンド、アラガア・ビート・バンド(The Alagaa Beat Band)のデビュー・アルバム『Avoudé』。彼が“アラガア・ビート”と呼ぶサウンドは、トーゴの伝統的なリズムや旋律にロックやファンクの要素が絡み、エネルギーに溢れる独特の創造的な音楽を作り上げている。
従来の音楽の“常識”や“法則”を打ち破りながらも、排他的なマニアたちの溜飲を下げるだけでなく、市井の多くの人々の間でインフルエンスしそうな興味深いグループが現れた。ロンドンを拠点に活動する男女ユニット、キット・セバスチャン(Kit Sebastian)の奇妙な音楽には従来なかった新しさがあり、同時に時代を超えたノスタルジアがあり、そしてポップスの純粋な至福と安心感もある。
ドイツ・ベルリンを拠点とする女性SSWドータ・ケール(Dota Kehr)と、ブラジル北東部のセアラー州フォルタレザ出身の男性SSWダニーロ・ギリェルミ(Danilo Guilherme)による双頭名義(通称 Dan & Dota)のアルバム『De Repente Fortaleza』がリリースされた。ブラジル北東部特有の空気を纏った軽妙で美しいロック/トロピカリアを継承するサイケロックで、主にポルトガル語で歌われる二人のヴォーカルが織りなす世界観が素晴らしいアルバムだ。
アナログ機材によるローファイな質感のサイケデリック&ファンキーなバンドサウンドを聴きたいなら、イタリアで大人気のシネマティック・ファンクバンド、カリブロ35(Calibro 35)に注目すべきだ。2007年の結成以降、多数のオリジナル・アルバムや映画のサウンドトラック制作などで絶大な人気を得て、イタリアの音楽シーンのある一辺をリードする存在となった彼らが2022年作『Scacco al Maestro, Vol. 1』、『Scacco al Maestro, Vol. 2』でのエンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone, 1928 - 2020)への無限の愛情の表明を経てリリースした最新作『Nouvelles Aventures』(2023年)は、変わらず勢いのある意欲的で素晴らしい音楽作品に仕上がっている。