ファビオ・ロハス、祖国ベネズエラへの想いを反映したデビュー作
ベネズエラから米国に移住し、ニューヨークで活動するドラマー・作曲家ファビオ・ロハス(Fabio Rojas)の初リーダー作『Perseverance』。アルバムのタイトルは英語で“忍耐力”だが、彼が好むスペイン語の“el que persevera, vence”(耐え忍ぶ者が勝つ)という諺からインスパイアされたものであり、これは祖国ベネズエラの混迷を極める独裁的な政治への言及と、個人的な葛藤の想いを反映したものとなっている。
不穏な雰囲気で始まる(1)「Ni Un Paso Atras」(一歩も退かない)は民主主義の崩壊した祖国への抵抗をストレートに表す曲で、冒頭のピアノのリズムは抗議活動で何万人ものベネズエラ人が何年もかけて叫んできた「一歩も退かない!」というスローガンを転写したもの。この曲はバンドのピアニスト、ケヴィン・ハリス(Kevin Harris)と共同名義でリリースした2022年作『Contraluz』にも収録されていたもので、ファビオ・ロハスの強い意思の表れといえる。今作ではそのケヴィン・ハリスのほか、米国の巨匠アルトサックス奏者グレッグ・オズビー(Greg Osby)とブラジル出身のマルチ木管奏者グスタヴォ・ダミコ(Gustavo D’amico)の2管を擁しており、さらにペルー出身のベース奏者オズマール・オクマ(Osmar Okuma)が参加したクインテット編成で、祖国への憂いを伝えている。
「Nu, Justice or Accomplice?」(Nu、正義か共犯か?)は、ベネズエラの危機に対する国連の怠慢への不満を絶望的なバラードで表現する。
ファビオ・ロハスは「アーティストは自分たちが生きている時代を反映し、その過程で革新していくべきだと私は思う」と語る。このアルバムは、若くして米国に渡り、客観的に祖国の変遷を眺めてきた彼がこれまでの経験や想いをアートに昇華した、無視のできない作品だ。
Fabio Rojas – drums
Greg Osby – alto saxophone
Gustavo D’amico – tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Kevin Harris – piano, Fender Rhodes
Osmar Okuma – double bass, electric bass