テヘラン生まれの鍵盤奏者/作曲家ハムゼ・イェガネ新作
ペルシアン・ジャズの雄、イラン・テヘラン出身のピアニスト/作曲家ハムゼ・イェガネ(Hamzeh Yeganeh)の新譜『Hand in Hand』がリリースされた。基本的にピアノトリオ編成で、エレクトリック・ベースのイディン・サデグザデ(Idin Sadeghzadeh)、ドラムスのアミン・タヘリ(Amin Taheri)とともに奏でるペルシャの伝統音楽を取り入れた独創的なジャズ・フュージョンは、なかなか他では聴けない楽しさがある。
多作で知られるハムゼ・イェガネの音楽の基礎にあるのは、間違いなく欧米のジャズやロックだ。だが彼はその世界にありふれた音楽スタイルに一歩踏み込み、“ペルシャの伝統音楽”の要素を大胆に加えたことで現在の唯一無二の地位を獲得した。
もしハムゼ・イェガネの音楽を聴いたことがなければ、まずはこのアルバムを再生してみてほしい。冒頭の(1)「Missing Trees」から濃密な音楽体験が約束されている。
多くの曲でコード進行は特筆するようなものではないが、変拍子の曲も多く、その上に乗るメロディーには独特の旋法が目立つ。それはテーマが終わりアドリブに入っても随所で極めて特異な色彩を放ち、リスナーの耳に強い印象を残すものになっている。
Hamzeh Yeganeh 略歴
ハムゼ・イェガネは1977年イラン・テヘラン生まれ。父親は複数の楽器をこなすミュージシャンで、イランのサイケロックのレジェンドであるコロシュ・ヤグマエイ(Kourosh Yaghmaei)のバンドのドラマーでもあった。そんな家庭環境もありハムゼは幼少期からプログレやロック、ジャズへの興味を育み、彼もまたドラマーになりたいという夢を持つようになったが、90年代のイランではドラムセットの購入することが困難だったため、ジャズピアノ好きの叔父の影響でピアノを始めることにしたという。
ジャズに魅了されていたハムゼだが、当時周りにはジャズを教えられる先生はいなかった。そこで17歳でクラシックピアノを始め、大学でピアノと作曲を学んだ。大学ではイランの民族楽器も学び伝統音楽への見識も深めていき、その経験が民族音楽とジャズを融合する現在のスタイルに繋がっている。
その後にイラン革命後初のジャズバンドと言われるÂbrangをギタリストのマハン・ミララブ(Mahan Mirarab)らと結成したり、2007年にはマハン・ミララブ、ドラマーのアミン・タヘリ(Amin Taheri)とともにナイマ・ペルシアン・ジャズバンド(Naima Persian Jazz Band)を結成するなどイランを代表するジャズ・ピアニストとして知られるようになっていった。
Hamzeh Yeganeh – piano, keyboards
Idin Sadeghzadeh – bass
Amin Taheri – drums
Kaveh Sarvarian – tombak (9)