カタルーニャの印象派ピアニストが綴る“モンポウへの再訪”

Lluis Capdevila - MOMPOU Revisited: Intimate Impressions

フェデリコ・モンポウ『内なる印象』への再訪

音楽の価値をその売上や再生回数で測ろうとするとき、フェデリコ・モンポウの初期作品『内なる印象』のまるまる全曲をピアノトリオでジャズアップして売り出したいという企画を提案すれば、おそらくそれは即却下となるだろう。極端に内気な性格故にその人生や作品にはほとんど光が当たらず、マニアを除いて語られる機会も少ないこの地味な作曲家が残した地味な曲たちは、今日でも殆ど顧みられることがない。

フェデリコ・モンポウと同郷カタルーニャ生まれのピアニストのリュイス・カプデビラ(Lluis Capdevila)は、この歴史に埋もれかけたピアニストに再び光を当てようとする。『MOMPOU Revisited: Intimate Impressions』は、モンポウの最初期の作品『内なる印象』へのジャズ・ピアノトリオでの再訪だ。彼はとりわけ“繊細”“静謐”と評価されるモンポウの曲に魔法のような郷愁をまぶし、見事に現代に蘇らせた。

(1)「I」

『内なる印象』(Impresiones intimas)はフェデリコ・モンポウ(Frederic Mompou, 1893 – 1987)が1911年から1914年にかけて書き、初めて出版した作品であり、同時に彼の長い生涯での代表作として知られる作品でもある。今作では4つの楽章から成る第一番(1)〜(4)「哀歌」、モンポウの父が飼っていたベニヒワという小鳥がモチーフとなっている(5)「Sad Bird」(悲しい鳥)、3拍子の原曲を5拍子にアレンジした(6)「The Boat」(小舟)、希望のある(7)「Cradle」(ゆりかご)、文字通りの(8)「Secret」(秘めごと)、ジプシー(ロマ)の人との出会いの思い出を綴った温かな(9)「Gypsy」と、モンポウ初期の作品がピアノトリオ編成でアレンジされ演奏される。

ベースにギリシャ出身の名手ペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)、ドラムスにはイタリア出身のルカ・サンタニエロ(Luca Santaniello)という布陣が、モンポウの静寂をより美しく現代に溶け込ませる。
おそらく“売れる”作品ではないが、これは生活の傍にあってほしい、大切な音楽だ。

(6)「The Boat」

Lluis Capdevila – piano
Luca Santaniello – drums
Petros Klampanis – bass

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