芳醇なワインのような香り。リュイス・カプデビラの久々のトリオ作『Social』

Lluis Capdevila - Social

スペインのピアニスト、リュイス・カプデビラ 抒情的なトリオ作

抒情的な表現が魅力のスペイン・カタルーニャ出身のピアニスト/作曲家リュイス・カプデビラ(Lluis Capdevila)の新譜『Social』は、近年のジャズのピアノトリオ作品の中でも注目されるべき一枚だ。

ギリシャ出身のベーシスト、ペトロス・クランパニスPetros Klampanis)と、イタリア生まれのドラマー、ルカ・サンタニエロLuca Santaniello)とのトリオは高く評価されたデビュー作『Diaspora』(2006年)以来。ジャズに導かれてニューヨークで出会った三人が再び集い、急変する“社会”をテーマにしたアルバムを作った。

このリユニオンを象徴するような(1)「We’ll Fly Again」、とても抒情的でありながら明快なリズムの心地よさも持つ(2)「Misery」など、幕開けから感情を揺さぶられる演奏が続く。リュイス・カプデビラ名義の作品ではあるが、ワールドワイドに活躍するペトロス・クランパニスとルカ・サンタニエロとの三位一体のアンサンブルはどこまでも堅牢で美しい。(6)「East Broadway」ではゲストでジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano)も参加し老練のサックスを聴かせてくれる。

アルバムにはリュイス・カプデビラのオリジナルのほか、ボブ・ディラン(Bob Dylan)の(5)「Make You Feel My Love」や、スタンダードの(7)「Stardust」、(8)「What a Wonderful World」も。

(1)「We’ll Fly Again」

ワイン畑で生まれ育ったピアニスト

リュイス・カプデビラはワインの産地として有名なカタルーニャ州プリオラートに1981年に生まれた。幼い頃から自由な作曲や演奏を好み、大学では法律を学んだが、真の情熱である音楽に専念するために2007年に渡米。ニューヨーク市立のアーロン・コープランド音楽学校で学び、ストーニーブルック大学で音楽芸術の博士号を取得している。

卒業後もニューヨークを拠点に活動を行い、2016年にクラウドファンディングでの協力も得てデビュー作『Diaspora』を発表。故郷を離れ異国で暮らす人々の気持ちが込められたこの作品はアメリカ合衆国や母国スペインで高く評価された。その後もペトロス・クランパニスとのデュオなどほぼ毎年のペースで精力的に作品をリリース。2020年のソロピアノ作『Ètim』は自身のルーツに立ち返り、ワイナリーのグランドピアノでワイン樽と瓶に囲まれて7ヶ月の期間で制作された。

Lluis Capdevila – piano
Petros Klampanis – double bass
Luca Santaniello – drums

Guest :
Joe Lovano – saxophone

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