フライング・バントゥー、待望の新譜『Feja Feja』
世界最大の瀑布であるジンバブエのヴィクトリアの滝近くを拠点とするバンド、フライング・バントゥー(Flying Bantu)。非常に洗練されたアフロ・フュージョンで、ファンク、レゲエ、ロック、ジャズの要素が混ざり合ったサウンドに英語やバントゥー語の歌詞が乗る。楽器は一部でムビラの音色が聴こえるほかはほぼ西洋楽器で、スケールなども西洋音楽のものなので民族音楽色はかなり薄いが、それが逆に耳馴染みの良さに繋がっている。
2019年に最初のフルレンス・アルバム『Ceasefire』をリリースし、収録曲「Sunshine City」がヒットするなど現地で大きな人気と期待を獲得した彼らの2024年の待望の新作が今回紹介する『Feja Feja』だ。
(1)「No Money No Honey」から彼らの特徴が際立つ。力強いヴォーカル、強靭なリズム、グルーヴィーなベースにカッティング・ギター、絢爛なブラスのリフ。そしてソロはサックスだ。コーラス部分でのシンセの音色やコーラスワークも洗練されている。
アルバムからの最初のシングルである(4)「Mwana Wenyu」はアフリカらしい短調の曲で、バンドゥー語の歌詞は「依怙贔屓、縁故主義、あるいは差別的な扱いを受けることへの不満といった奇妙な関係」について歌っているという。ユッスー・ンドゥール(Youssou N’Dour, 1959 – )やサリフ・ケイタ(Salif Keïta, 1949 – )といったアフリカの世界的な巨匠たちのサウンドにも近しいものを感じる。
レゲエのエッセンスの混ざった(5)「Feja Feja」、教科書的だが効果的なクリシェを用いた(6)「Forever Together」、米国風のロック風フュージョン(7)「These Days」など、アルバムの後半も秀逸。楽曲はどれもキャッチーで、演奏陣の安定した技巧も相まって聴きやすい作品に仕上がっている。