DRコンゴの人気バンド Jupiter & Okwess、中南米からの影響も受けた激アツ4th『Ekoya』

Jupiter & Okwess - Ekoya

Jupiter & Okwess 4thアルバム『Ekoya』

中部アフリカ、コンゴ民主共和国の首都キンシャサを拠点とするバンド、ジュピター&オクウェス(Jupiter & Okwess)の2025年の新譜『Ekoya』。アフリカの伝統的なリズムにロック、ファンクといった要素を織り交ぜて国際的な人気を博した彼らが、2020年の南米ツアー中に見舞われたパンデミックによりツアー後にメキシコ滞在を余儀なくされ、ラテンアメリカの文化の影響を受けながらメキシコで録音されたのが本作だ。

今作でもエネルギッシュなアフリカ音楽×ファンク、パンクロックは健在で、齢60を超えるリーダーのジュピター・ボコンジ(Jupiter Bokondi)の尽きぬ表現欲を感じさせる素晴らしい音楽が展開される。中南米からの影響としては音楽面に強く表れているものではないが、ブラジルの歌手フラヴィア・コエーリョ(Flavia Coelho)がポルトガル語とフランス語で歌い、ジュピター・ボコンジが歌うモンゴ語とも共鳴しつつダンサブルなリズムで駆け抜ける(2)「Les bons comptes」などはキラートラックと言って良い素晴らしい仕上がり。

(2)「Les bons comptes」。サビで繰り返されるのはフランス語の格言「Les bons comptes font les bons amis」(良い勘定が良い友達を作る)

ラテンアメリカでの経験について、ジュピター・ボコンジはこう語っている:

ラテンアメリカは私たちに多大な影響を与えてきました…しかし、私たちの音楽は変わっていません。ただ、新たな次元が与えられただけです。そこにいた時、私たちは考え方を変えるきっかけとなるものを発見しました。なぜなら、そこはまるでアフリカの延長線上にあるからです。そこにはアフリカやコンゴにルーツを持つ人々がいて、彼らはアフリカの物語の一部です。彼らは私たちの一部であり、私たちの音楽の一部なのです。

bandcamp.com

(5)「Na Bado」

タイトル『Ekoya』はキモンゴ語で「それは来る」という意味で、気候変動や予期される危機がすでに現実化していることを示唆。各楽曲は貧困、戦争、政治腐敗、気候変動、森林破壊、土地紛争といった社会問題を扱い、家族や政治的な統一、人々の回復力、先住民のアイデンティティを強調している。アフリカのディアスポラがラテンアメリカに残した遺産を反映し、物質的なものへの争いの無意味さを訴えている。外部干渉を避けるよう促す曲も多く、パレスチナ・イスラエル戦争やロシア・ウクライナ戦争、コンゴ民主共和国内の紛争などにも間接的に触れている。また、”影の英雄”(ジャーナリストや技術者など)を讃える内容もあり、全体としてグローバルな視点で日常の複雑さを描き出している。

Jupiter & Okwess 略歴

ジュピター&オクウェスは1990年にジュピター・ボコンジ(Jupiter Bokondi, 1963 – )を中心にコンゴ民主共和国のキンシャサで結成された。ジュピター・ボコンジの父親は外交官で、彼が東ベルリンの大使館に赴任した際には一家で東ベルリンに住んでおり、ボコンジ自身もドイツ在住時にバンドを組むなど、西洋音楽とコンゴの伝統音楽の融合といった音楽観はこの頃に培われたようだ。

家族が故郷に戻った後に結成されたJupiter & Okwessはアフリカをツアーし徐々に人気を獲得していったが、そんな折に第一次コンゴ戦争(1996年11月〜1997年5月)が勃発。バンドメンバーの一部は暴力から逃れるためにヨーロッパに逃れたが、ジュピター・ボコンジはキンシャサに留まった。戦争が収束すると彼の人気は再び高まり、2006年にはドキュメンタリー映画『ジュピターズ・ダンス』に出演。これがきっかけでイギリスのプロデューサーやミュージシャンからの注目を集め、マッシヴ・アタック(Massive Attack)やアフリカ・エキスプレス(Africa Express)とのコラボレーションやツアー、そしてデビュー・アルバム『Hotel Univers』(2013年)を通して国際的にも知られる存在となった。

バンドのサウンドはアフロポップ、伝統的なコンゴのリズム、ファンク、そしてロックミュージックを融合させたもの。彼はこの独特のサウンドを「ボフェニア・ロック」(Bofenia Rock)と呼んでおり、歌詞にはコンゴ民主共和国政府への批判や、アフリカの人々が個々の才能と可能性をより発揮できるような激励など、政治的・社会的なメッセージが含まれていることも多い。

Jupiter Bokondi – vocals, percussion
Yende Balamba – bass, vocals
Montana Kinunu – drums, vocals
Eric Malu-Malu – guitar, choirs
Richard Kabanga – guitar, choirs

Guests :
Flavia Coelho – vocals (2)
Mare Advertencia – vocals (8)

Jupiter & Okwess - Ekoya
Follow Música Terra