フェリクス・ツルシュトラッセン率いるバンド「NOVA」新譜
ベルギーの気鋭ベーシスト/作曲家、フェリクス・ツルシュトラッセン(Félix Zurstrassen)の“Nova”プロジェクトの第三弾『NOVA Elusive』。細部まで練られたコンポージングや、様々な国からジャズという共通言語の旗印のもとに集ったメンバーによるボーダーレスなサウンドは、現代ジャズの筆頭格という彼らのこれまでの評価を裏切らない素晴らしい出来栄えだ。
バンドは5人編成で、ブラジル生まれ・フランス在住ギタリストのネルソン・ヴェラス(Nelson Veras)、オランダ人アルトサックス奏者ベン・ヴァン・ゲルダー(Ben Van Gelder)、ベルギーのドラマー、アントワン・ピエール(Antoine Pierre)、そして英国のピアニストのキット・ダウンズ(Kit Downes)という構成で、それぞれがソロやリーダーとしても活躍する俊英が揃っている。
アンサンブルはあらゆる場面で完璧に調和するが、ときにそれぞれの個性が大いに主張しぶつかり合う瞬間も楽しめる稀有なものとなっている。特に目立つのはゴダン(Godin)のナイロン弦のエレアコ(所謂“エレガット”)を弾くネルソン・ヴェラス、ピアノのキット・ダウンズ、そしてアルトのベン・ヴァン・ゲルダーの主張だ。それぞれが好き勝手にアドリブを弾いているようでいて、よく聴くとところどころ完璧にユニゾンしていたりとおそろしく高度なことを自然にやってのけている。これはお互いを認め、リスペクトし、信頼しているからこその芸当だとも感じる。
Félix Zurstrassen 略歴
今作の全ての楽曲を作曲するバンドリーダーでありベーシストのフェリクス・ツルシュトラッセンは1987年ベルギー・ブリュッセル生まれ。音楽一家に生まれ、幼少のころから音楽に浸り、14歳のときにエレクトリック・ベースと出会いすぐにこの楽器の虜となり、同時にジャズへの情熱を育んできた。2005年から2010年にかけてブリュッセル王立音楽院でミシェル・アツィジョルジウ(Michel Hatzigeorgiou)に師事。その後数々のプロジェクトで実績を残し、2017年には「ヤング・タレント」ジャズ賞を受賞した。
2017年にネルソン・ヴェラスとアントワン・ピエールを擁するトリオを率いて初めてリーダーとしての地位を確立。2019年には、オランダ出身の国際的に有名なアルトサックス奏者ベン・ヴァン・ゲルダーがバンドに加わり、アルバム『Nova』(2020年)をリリースし高い評価を得た。
BBCジャズアワードを受賞したイギリスの気鋭ピアニスト/オルガン奏者、キット・ダウンズとの2021年夏の出会いが彼の次の転機となった。この国際的に注目される音楽家はバンドにすぐに馴染み、新たなラインナップでのコンサートツアーを行い、そして新しいスタジオ・アルバムである本作の制作へと繋がった。
Ben Van Gelder – alto saxophone
Nelson Veras – electric-acoustic guitar
Kit Downes – piano
Félix Zurstrassen – bass
Antoine Pierre – drums