臍から臍へとサンバは受け継がれる──。バイーアの女性バンドが魅せるディープなブラジル音楽

Yayá Massemba - De Umbigo a Umbigo

女たちのサンバを体現するYayá Massemba、デビューEP

ブラジル・バイーアから注目すべきサンバのグループが現れた。
2018年に結成された女性6人で構成されるバンド、ヤヤ・マセンバ(Yayá Massemba)。音楽的には伝統的なサンバのスタイルを踏襲するが、現代的(普遍的、と言い換えても良いかもしれない)な価値観を全面に出しており、デビューEP『De Umbigo a Umbigo』は5曲の輝かしく素晴らしいオリジナルによって彼女らの存在に否応なく目と耳を注目させる。

Yayá Massemba の音楽はアフリカ系ブラジル人の文化を尊重し、女性として表現し、そして叡智を生み出す基盤としてのサンバのルーツを広めることを目的としている。グループ名の「Yayá」はヨルバ語で“母親”を意味し、キンブンドゥ(アンゴラで話されているアフリカの言語)に由来する「Massemba」はアフリカ起源の宗教に存在するウンビガダ(臍 = umbigo を突き出す動作)を指す。

そしておそらく、グループ名はマリア・ベターニア(Maria Bethânia)の名曲「Yáyá Massemba」から取られている。さらに(1)「De Umbigo a Umbigo」(臍から臍へ)も同曲の歌詞からインスパイアされたものだろう。印象的な3声のア・カペラのコーラス・ワークで始まるこの曲はそのタイトルに象徴されるように祖母から母、娘と生命を次の世代へと絶え間なく繋いでいく女性たちへの賛歌だ。バンドメンバーは弦奏者2人、あとの4人はパーカッションだからクラリネットやフルートはサポートメンバーだろうが、オーガニックで感性豊かなサンバのグルーヴが最高に心地よい。

(1)「De Umbigo a Umbigo」(臍から臍へ)のMV

(2)「Dona Aurinda」の冒頭にはバイーア州イタパリカ島のメストラ(Mestra = 女性の巨匠)であるドナ・アウリンダ・ド・プラト(Dona Aurinda do Prato)の声が収められている。さらに(3)「Face Dourada」ではサンバのルーツと言われるサンバ・ヂ・ホーダを広めた中心人物であるネガ・ドゥダ(Nega Duda)がフィーチュアされ、誇り高きカボクロのサンバを歌う。

ヤヤ・マセンバと、イタパリカ島のメストラ、ドナ・アウリンダ。お皿とフォーク(prato-e-faca)での演奏は、バイーアの古典的なミニマルなサンバの風景だ。

(5)「Enegrecer」はビリンバウの音色で始まる。
当たり前のようにやってのけているが、彼女らの演奏は相当に熟練している。7弦ギターのバイシャリーア(ベースライン)、歯切れの良いカヴァキーニョ、多数のパーカッションの複雑な絡み合い、そして胸を打つコーラス・ワークは何よりも素晴らしい。ブラジルのサンバや、それを生んだアフロ・ブラジルの伝統文化を深くリスペクトし、全身全霊で演奏を愉しむ彼女らの音楽が退屈なわけがない。

Ana Tomich – vocal, 7-string guitar
Aline Silveira – vocal, percussion
Edy Albuquerque – percussion
Ive Farias – vocal, percussion
Keilla Calmon – percussion
Priscilla Oliveira – vocal, cavaquinho

Yayá Massemba - De Umbigo a Umbigo
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