Beledo 新作『Flotando en el vacio』
ウルグアイ出身のギタリスト/作曲家ベレード(Beledo)の新譜『Flotando en el vacio』。スペイン出身のフルート奏者ホルヘ・パルド(Jorge Pardo)、同じくスペイン出身ベーシストのカルレス・ベナベント(Carles Benavent)──この二人はパコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)の傑作『Solo quiero caminar』(1981年)に共に参加している──、そしてイスラエル出身で2023年に伝説的ジャズロック・バンドのソフト・マシーン(Soft Machine)に加入したドラマー、アサフ・サーキス(Asaf Sirkis)をコアバンドとしたジャズロック/フュージョン好きには堪らない作品だ。
アルバムの多くは正統派のジャズロックが収録されているが、まず真っ先に耳を惹くのは民族的なフルートとフラメンコ・ギターの音色で始まる(1)「Djelem Djelem」だ。これはバルカン半島のロマ(ジプシー)の伝統歌で、スパニッシュ・スケールで繰り広げられるフラメンコ・フュージョンが楽しい。中間部ではベレードによるヴァイオリンのソロも聴くことができる。
(2)「Rauleando」以降はジャズロックのテイストとなり、曲によっては鍵盤奏者のゲイリー・ハズバンド(Gary Husband)がゲスト参加し盛り上げる。やはりこのメンツだからか、速弾きの応酬となる場面も多々あり、楽曲自体というよりもここに集った世界的スーパー・プレイヤーたちによる超人的な楽器演奏に注目して聴きたいアルバムとなっている。
ウルグアイの伝説的ギタリスト、Beledo 略歴
ホセ・ペドロ・ベレード(José Pedro Beledo, 単に”Beledo”として知られる)はウルグアイの首都モンテビデオ生まれ。6歳の頃からピアノの教育を受けたが、1960年代半ば以降のブリティッシュ・インヴェイジョンの世界的な流行を受け、ビートルズなどのロックバンドとギターに惹かれた。
10代の頃には既に若きギターヒーローとしてモンテビデオのあらゆるライヴ会場に出演。ウルグアイのロックとブルースのスーパーグループ、ディアス・デ・ブルース(Días de Blues)に短期間在籍した後、彼はジャズロックバンド、メイトレヤ(Maytreya)を結成。その後、チック・コリアやウェザー・リポートなどのジャズ・フュージョンのムーヴメントに触発され、伝説のバンド、シッダールタ(Siddhartha)を結成した。
これまでにパット・メセニー・グループ(Pat Metheny Group)のメンバーであったアルゼンチン出身のペドロ・アスナール(Pedro Aznar)、ウルグアイの伝説的打楽器奏者ルベン・ラダ(Rubén Rada)、ブラジルのアイルト・モレイラ(Airto Moreira)との活動で知られるバンド、オパ(Opa)とのレコーディングで活躍し、米国のギター・プレイヤー誌などで新進気鋭のギタリストとして注目された。
米国に活動の拠点を移してからは2013年にアラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)のオープニングアクトとしてアメリカ北東部をツアーし、その後はイギリスのジャズロックバンド、ソフト・マシーン(Soft Machine)とカナダのトロントを含むツアーに参加している。
ソロ名義での活動を本格化したのは2016年のアルバム『Dreamland Mechanism』からで、以降コンスタントにアルバムをリリースしている。
Beledo – electric guitar, Spanish guitar, acoustic piano, violin
Jorge Pardo – flute, tenor saxophone
Carles Benavent – bass guitar
Asaf Sirkis – drums
Guests :
Gary Husband – Fender Rhodes, Mimi Moog (3, 5, 8)
Ramón Echegaray – candombe percussion (6)