ブラジリアン・ヒップホップの雄、Marcelo D2 新譜
全編生バンドでのブラジリアン・ヒップホップ作『Direct-to-Disc』を2024年11月にリリースしたばかりのサンバ・ヒップホップの先駆者、マルセロ・デードイス(Marcelo D2)が、早くも新しいプロジェクトからの新譜『Manual Prático Do Novo Samba Tradicional, Vol. 1: DONA PAULETE』をリリースした。
“新しい伝統サンバの実践マニュアル”という意味を持つ今回のプロジェクトでは、2025年のカルナヴァルまでに4枚のアルバムをリリースする予定。第一弾は2021年に亡くなったマルセロの母親であるパウレッチ・マルドナド(Paulete Maldonado)に敬意を表しており、マルセロが自身のバンド、プニャード・ヂ・バンバ(Um Punhado de Bamba)のショーで演奏してきたサンバの再解釈を含む7曲がフィーチュアされている。
タイトルが示す通り、伝統的なサンバへの強いリスペクトが感じられる内容で、自作の(2)「OBRIGADO SAMBA」に象徴されるようにサンバとヒップホップの自然な融合が楽しめる作品だ。7弦ギターやカヴァキーニョ、パンデイロ、クイーカといったサンバに欠かせない楽器の生演奏に加え打ち込みやポスト・プロダクションも巧妙に取り入れられ、マルセロD2流のクリエイティヴなサンバが最高に良い。
パゴーヂの(4)「CASTELO DE UM QUARTO SÓ」はヴィニー・サンタ・フェ(Vini Santa Fe)作曲。サンバやパゴーヂで多用されるハーフディミニッシュ1の和音がサウダーヂを喚起する。
アルバムには自身のかつてのヒット曲(7)「DESABAFO」のセルフカヴァーも。
Marcelo D2 略歴
マルセロD2(本名:Marcelo Maldonado Gomes Peixoto)は1967年ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。ベー・ネガォン(BNegão)ら同郷の音楽家たちと結成したヒップホップ・グループ、プラネット・ヘンプ (Planet Hemp)での活動を経て1998年にファースト・ソロ・アルバム『Eu Tiro É Onda』を発表。ヒップホップのムーヴメントにも乗り、多くのリスナーからの支持を集めた。
これまでにゼカ・パゴヂーニョ(Zeca Pagodinho)やアルリンド・クルス(Arlindo Cruz)といったサンバ・パゴーヂ界隈の巨匠や、ウィル・アイ・アム(Will.i.am)、セルジオ・メンデス(Sergio Mendes)、マカコ(Macaco)といった世界的なスターとも共演している。
- ハーフディミニッシュ…ルート(根音)、短3度、減5度、短7度で構成されるコード。コードネームでは「m7♭5」や記号「ø」で表される。「減5短7の和音」、「導七の和音」とも呼ばれる。アクセント的に使われることの多い和音だが、サンバやパゴーヂでは楽曲のセクションの最初の和音に用いられることも多く、独特のサウダーヂ感を生み出す。 ↩︎