創造性がつくる即興のキャンバス。ヤロン・ヘルマンが描く美しい音の冒険

Yaron Herman - Radio Paradice

創造性を刺激する、ポジティヴなジャズ。ヤロン・ヘルマン新譜

イスラエル出身、フランスで活躍するピアニスト/作曲家のヤロン・ヘルマン(Yaron Herman) が、新譜『Radio Paradice』をリリースした。アスリートから転向し16歳からピアノと音楽を始め、ジャズの世界で唯一無二の活躍を続け、“創造力とは生まれ持った才能ではなく、学ぶことで誰もが得られるスキルである”という持論を広く世界に発信し多くの共感を得る彼の音楽には、今作でもポジティヴな未来志向の感覚が満ちている。

収録された9曲はすべてヤロン・ヘルマンのオリジナル。バンドは長年の音楽的パートナーであるドラマーのジヴ・ラヴィッツ(Ziv Ravitz)、ベースのハガイ・コーエン・ミロ(Haggai Cohen Milo)のイスラエル勢に加え、二人の気鋭女性サックス奏者──スイス出身のマリア・グラン(Maria Grand)、エジプト出身のアレクサンドラ・グリマル(Alexandra Grimal)が参加し、とりわけヤロン・ヘルマンの美しいメロディーを華やかに強調する。

アルバム『Radio Paradice』のEPK

インスピレーションの源はキース・ジャレット(Keith Jarrett)からオーネット・コールマン(Ornette Coleman)、スフィアン・スティーヴンス(Sufjan Stevens)、ガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré)、さらには建築や詩まで、ジャンルを超越した広い範囲にわたる。アルバムでのバンドの演奏はテーマと即興というジャズのセオリーに則っているが、メンバーがそれぞれ歩んできた異なる文化や人生の交差と融合、そこに生まれる様々な瞬間的感情を的確かつエキサイティングに捉えている。

Yaron Herman 略歴

ヤロン・ヘルマンは1981年イスラエル生まれ。彼がピアノを始めたのは16歳の頃から。それまではイスラエルのナショナルチーム(U-16)に選出されるなど将来を期待されるバスケットボール選手で、自身もバスケットボールのプロを目指していたが、試合中に膝を大怪我したことで歩む道を変えることとなった。

彼のピアノの師であるオフェル・ブレイエル(Opher Brayer)は、哲学や数学、心理学に基づいた独自の方法論で彼を導いた。バスケットボールをピアノに持ち替えたヤロン・ヘルマンは、彼の人生を左右する大怪我のわずか二年後に、栄誉あるリモン・スクール・オブ・ジャズ・アンド・コンテンポラリーミュージックの「ジュニアタレント」賞を受賞。
その後19歳で米国に移住し、21歳のときにドラマーとのデュオでデビュー作『Takes 2 to Know 1』を録音した。

その後の躍進は目覚しく、アルバム『A time for everything』(2007年)で「Victoire du jazz」、『Muse』(2009年)で「iTunes title Jazz Album of the Year in 2009」を獲得するなど、今ではイスラエルジャズの第一人者としてその活躍が知られている。2022年には初の著書『創造力は眠っているだけだ』も刊行し、イスラエル/フランスのジャズにおいて個性的な存在感を示し続けている。

Yaron Herman – piano
Maria Grand – alto saxophone
Alexandra Grimal – alto saxophone
Ziv Ravitz – drums
Haggai Cohen Milo – double bass

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