16歳でピアノを始めた遅咲きのジャズピアニスト、ヤロン・ヘルマンが考える「創造力」とは?

Yaron Herman (Photography: Hamza Djenat)

音楽に必要なのは「才能」? それとも……

「自分には才能がないから、演奏がなかなか上達しない……」

「歌や楽器を習いたいけど、この年齢じゃ遅すぎるからな……」

「クリエイティブになれるのは天才だけ。凡人は何をやってもしょうがない……」

皆さんはそのように思ったことはないだろうか? 音楽が好きで、名作・名演の数々を聴き込んできたからこそ、自分の才能のなさに落胆するという読者も少なくないだろう。

イスラエル出身のジャズピアニスト、ヤロン・ヘルマンが綴った著書『創造力は眠っているだけだ』(プレジデント社)は、そんな思いにそっと手を差し伸べてくれる一冊だ。

『創造力は眠っているだけだ』(プレジデント社)ISBN: 978-4833424349
日本語版刊行に合わせ、著者ヤロン・ヘルマンが自らセレクトしたプレイリストも公開中。

『創造力は眠っているだけだ』(プレジデント社)

  • 著:ヤロン・ヘルマン
  • 訳:林昌宏(仏日翻訳者)、坪子理美(英日翻訳者、博士(理学))、ふるたみゆき(小説家)
  • ISBN: 978-4833424349

異色のジャズピアニスト、ヤロン・ヘルマンとは?

ピアニストのヤロン・ヘルマンは1981年イスラエル生まれ。パリを拠点に活動し、イスラエル・ジャズの注目株として故チック・コリアなどとも共演してきた。バッハ、ニルヴァーナ、レディオヘッドを愛する彼のピアノは、躍動感がありながらも透明感と繊細さを併せもつ音作りが持ち味だ。

「ピアノに向き合う時間が最上の幸せ」と語るヤロン・ヘルマンだが、実はもともと音楽に縁があったわけではない。家族や親類に音楽関係者はおらず、家にもピアノはなかった。まともに鍵盤に触れたのはなんと16歳になってからだったという。故国イスラエルでバスケットボールU-16代表候補に選ばれながら、試合中の大怪我によって選手生命を断たれたことがきっかけだった。

失意の中で出会った音楽は、やがて彼の人生を大きく好転させた。自身を「天才ではない」と語るヤロン・ヘルマンは、なぜ国際的に活躍するピアニストになれたのだろうか。本人曰く、その鍵は「創造力」だという。

遅咲きのピアニストが語る「創造力」発掘のポイント

《ポイント1》「創造力」はすべての人に備わっている

ヤロン・ヘルマンは「創造力」を次のように定義する。

  • 「才能」とは異なる力。
  • 自分の内面を表現する力。
  • 何歳になっても磨くことのできる力。
  • すべての人に備わっている力。

「創造力」は天賦の才能ではなく、個々人の奥底を流れる地下水のようなものだとヤロン・ヘルマンは語る。本書では、彼のこれまでの実体験を交えながら、「創造力」を解き放つための実践的なヒントを多数紹介している。レコーディングやパフォーマンスにまつわる秘話のほか、ブラッド・メルドーなど、名ミュージシャンたちとの交流エピソードも必読だ。

《ポイント2》視点の変化によって「創造力」は輝く

ヤロン・ヘルマンにピアノを教えたオファー・ブレイエルは、生徒ひとりひとりの個性を尊重する教育者だった。その教育メソッドに基づき、ヤロン・ヘルマンも劣等感や失敗への向き合い方を見出し、自らの中に眠る「宝」を発見したという。

著書『創造力は眠っているだけだ』では「ミッション」と題し、日常生活の中でクリエイティブな視点を養うトレーニングを紹介している。

また、彼は恩師との対話を通して学ぶ喜びも知ったと語る。師匠であるオファー・ブレイエルのレッスン室には、『荘子』、オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』、ウスペンスキーの『第四の道』など、古今東西の書物がいつもさりげなく(しかし、明らかに目につく場所に……)置かれていたそうだ。博学の恩師の言葉は、ヤロン・ヘルマンの中に多分野への好奇心を呼び起こした。プレイフルで開拓心旺盛なその姿勢は、彼の作曲や演奏にも反映されている。

《ポイント3》「ベイビー・ステップ」——あまりにも小さな積み重ねの上にこそ「創造力」は広がる

ヤロン・ヘルマンがピアノを習い始めたのは16歳。一般的には遅すぎる年齢、かつ、ゼロからのスタート。本人も周囲も、まさか彼がプロになるとは考えもしなかったという。そんなヤロン少年をいつの間にか現在の道へと導いていたのは、彼が「ベイビー・ステップ」と呼ぶものの積み重ねだった。

「歩き始めたばかりの赤ちゃんを見ると、『歩くこと』への純真な決意に心を打たれます」とヤロン・ヘルマンは語る。

つかまり立ちし、小さな片足をもう片足の前に出し、そして……転ぶ。あまりにもぎこちない試みだが、脇目もふらず何度も立ち上がる中で、いつしか子どもは歩けるようになっている。一歩、また一歩。よちよち歩きで踏み出すその表情は実に嬉しそうだ。

「生まれて間もない赤ちゃんにとって、失敗しても失うものはほとんどありません。この姿勢こそが、恐るべき効果を生むのです」

初心者であることを楽しみ、小さな歩みを全身全霊で味わうこと。それが「ベイビー・ステップ」のコツだという。

「創造力」は何歳になっても磨ける

楽器の練習に取り組む上ではいくつもの壁が立ちはだかる。先延ばし癖、基礎練習への苦手意識、劣等感。そんな時、ヤロン・ヘルマンは「笑ってしまうほど小さな目標を立てる」ようにしてきたそうだ。「1日3分だけピアノに向かう」(←30分ではない!)、「スケール(音階)練習を1分間やる」などなど。ハードルを思い切ってぐっと下げ、「笑ってしまうほど」コンパクトな習慣をライフスタイルの中に取り入れることが、気負わずに成長できる秘訣なのかもしれない。

「創造的な活動に、遅すぎることは決してありません」と、ヤロン・ヘルマンは読者にエールを送る。年齢を理由に楽器や音楽から遠ざかってしまった人。自分には才能がないと思っている人。クリエイティブな生き方を模索中の人。『創造力は眠っているだけだ』で紹介されるメソッド集は、そんな読者に一歩を踏み出す勇気を与えてくれる。

赤ん坊のような小さな歩み=「ベイビー・ステップ」を重ねた先には、どんな景色が見えるだろうか? ぜひ彼の著書を開いて確かめてみてほしい。

(ふるたみゆき&坪子理美)

《プレイリスト「Yaron Herman – Le déclic créatif (創造力は眠っているだけだ)」》

ヤロン・ヘルマンが『創造力は眠っているだけだ』刊行に合わせて選んだ特別プレイリストを公開中。著書と合わせてチェックしたい。

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本の情報

『創造力は眠っているだけだ』(プレジデント社)

  • 原題:Le Déclic Créatif 〔創造性のきっかけ〕
  • 著:ヤロン・ヘルマン
  • 訳:林昌宏(仏日翻訳者)、坪子理美(英日翻訳者、博士(理学))、ふるたみゆき(小説家)
  • ISBN:978-4833424349
  • 発売日:2022年3月15日

全国の書店ほか、プレジデント社オンラインストア(PRESIDENT STORE)およびAmazon等のECサイト・電子書籍ストアで販売中。

16歳でピアノを始めた遅咲きのジャズピアニスト、ヤロン・ヘルマンが考える「創造力」とは?

Yaron Herman (Photography: Hamza Djenat) (写真は本人提供)

Yaron Herman (Photography: Hamza Djenat)
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