ブラジルの熟練トリオによる極上のショーロ音楽
ブラジルの7弦ギター奏者アレサンドロ・ペネッシ(Alessandro Penezzi)と、バンドリン奏者ファビオ・ペロン(Fábio Peron)、そしてクラリネット奏者のナイロール・プロヴェータ(Nailor Proveta)による『Na Trilha do Choro』は、ブラジル特有のショーロ音楽の美しい詩情を堪能できる作品だ。
アレサンドロ・ペネッシとファビオ・ペロンは当サイトが“息を呑むほど美しい”と評した初のデュオ作『Alessandro Penezzi e Fábio Peron』を2022年にリリースしており、今作はそこにクラリネットを加えさらに洗練された室内楽ショーロを展開する。収録曲はブラジル・サンパウロ生まれの作曲家アレシャンドリ・ゲーハ(Alexandre Guerra, 1971 – )の楽曲群で、タイトル“ショーロの道”のとおり、壮大な映画音楽や舞台音楽で定評のある彼の作品においても、とりわけそのルーツを垣間見ることができるショーロの楽曲を選曲。文字通り古典的なショーロの様式美に満ちていながら、その複雑な楽曲構成やリズム、卓越したアレンジと演奏によって新鮮な印象さえ与える素晴らしい音楽が繰り広げられる。
7弦ガットギター奏者 Alessandro Penezzi 略歴
7弦ギターのアレサンドロ・ペネッシは1974年サンパウロ州ピラシカバ生まれ。ギターだけでなくバンドリン、バンジョー、カヴァキーニョ、コントラバスなど複数の弦楽器やフルートなどの横笛、パーカッションなど様々な楽器をマルチにこなす生来の音楽家だ。
7歳の頃にギターを始めたがその上達のスピードは早く、10歳の頃には12歳と偽ってクラシックギター教師の音楽教室に通い始めた(12歳というのはその教室で習える年齢の下限だった)という逸話も残っている。
ショーロを軸に活動する彼は、同じグループで活動していたこともあるヤマンドゥ・コスタ(Yamandú Costa)、ホジェリオ・カエターノ(Rogerio Caetano)らとともに現代最高峰のギタリストとして知られている。
10弦バンドリン奏者 Fábio Peron 略歴
サンパウロの音楽シーンでも最も才能ある若手バンドリン奏者として知られるファビオ・ペロンは、5歳の頃から演奏を始めている。
両親はサンパウロのバンドリン奏者イザイアス・ブエノ・ヂ・アルメイダ(Izaías Bueno de Almeida)のバンドで活動したヴェラ・キュリー(Vera Cury)とイタロ・ペロン(Italo Perón)で、ファビオ自身もイザイアスと共に過ごす時間が長く、この経験がバンドリン奏者としての道の決定打となったようだ。
主に5コース10弦のバンドリン(通常のバンドリンは4コース8弦)を用い、ショーロを基軸としながらも世界中のさまざまな時代の音楽を研究してきた彼の演奏は柔軟性があり、アミルトン・ヂ・オランダ(Hamilton de Holanda)らブラジルを代表するベテラン音楽家からも注目を浴びる存在となっている。
クラリネット奏者 Nailor “Proveta” Azevedo 略歴
クラリネットのナイロール・プロヴェータは1961年生まれ。1991年にビッグバンド「Banda Mantiqueira」を結成し、ピシンギーニャ(Pixinguinha)、トム・ジョビン(Tom Jobim)、エルネスト・ナザレー(Ernesto Nazareth)などのブラジル音楽の名曲をアレンジし、独自の“ブラジルらしさ”を追求。バンドは1998年にグラミー賞にノミネートされるなど国際的な評価を得た。
これまでの共演者はジョイス(Joyce)、シモーネ(Simone)、エルザ・ソアレス(Elza Soares)などなど枚挙に遑がなく、近年は伝説的ギタリスト/作曲家ギンガ(Guinga)に帯同し来日公演を行ったことも記憶に新しい。
Alessandro Penezzi – 7-string guitar
Fábio Peron – bandolim
Nailor Proveta – clarinet