【追悼】ナナ・カイミ ─ 84年の生涯の84曲

 ブラジル音楽史において最も秀でた表現力/歌唱力のある歌手の1人として讃えられてきた女性歌手のナナ・カイミ(Nana Caymmi)が、2025年5月1日に亡くなりました。父にドリヴァル・カイミ、弟にドリ・カイミとダニーロ・カイミという音楽一家の中で育ち、早くからその才能を開花させました。

 彼女の人生や、彼女の死に対する周囲からのコメントなどは、e-magazine LATINA に記しましたが、この「ナナ・カイミ ─ 84年の生涯の84曲」はその記事を補完し合いつつ、ナナ・カイミの遺した作品の永遠の輝きを、実際に聴きながら一緒に感じたいと言う気持ちで用意しました。

 この84曲のリストを選んだのは、ブラジルの著名な音楽ジャーナリスト兼評論家のマウロ・フェヘイラ(Mauro Ferreira)さん。※「Eis 84 gravações que elevaram Nana Caymmi em 84 anos de vida dedicada a cantar a melhor música do Brasil」 。愛を持って選ばれています。

 しかしながら、彼はこれをプレイリストにはしないと明言しており、そこで、ここでプレイリストのような形で、全曲紹介しました。解説文も同リストに準じていますが、日本向けに直したところもあります。ナナ・カイミの遺した重要な楽曲が網羅されています。まさに【保存版】のリストです。

 ナナ・カイミの歌が、今後、ここ日本でもずっとずっとずっと聴かれ続けることを祈っています。

▶︎ 1. Acalanto (Dorival Caymmi) – 1960年、父、ドリヴァル・カイミとのデュエットで、ナナのキャリアは幕を開けた。ドリヴァル・カイミのアルバムに収録。ドリヴァルがナナのために書いた優しい子守唄。

▶︎ 2. Morrer de amor (Oscar Castro Neves e Luvercy Fiorini) – 1965年のデビュー・アルバムのオープニングを飾るドラマチックな一曲。

▶︎ 3. Saveiros (Dori Caymmi e Nelson Motta) – 1966年の国際音楽歌謡祭で不当なブーイングを受けた楽曲。ブーイングを受けながらも優勝した。

▶︎ 4. Atrás da porta (Francis Hime e Chico Buarque) – 1973年にアルゼンチン向けに制作されたアルバムの録音(リンク音源のジャケットは、のちにリリースされたブラジル発売時のジャケット)。

▶︎ 5. Pra você (Silvio Cesar) – 同じ1973年のアルゼンチン向けアルバムに収録された、優しいロマンティックな曲。

▶︎ 6. Ahiê (João Donato e Eumir Deodato) – 1973年の同じアルバムより。ジョアン・ドナートの楽曲の洗練された軽やかさを表現。

▶︎ 7. Ponta de areia (Milton Nascimento e Fernando Brant) – 1975年、コーラスで参加のミルトン・ナシメントとミナス・ジェライスの風景を描く。

▶︎ 8. Beijo partido (Toninho Horta) – 1975年、上述のアルバムに収録された象徴的録音。

▶︎ 9. Passarela (Carlos Dafé) – 当時無名だったソウル歌手、ダフェのサンバを歌う(1975年)。

▶︎ 10. Mãos de afeto (Ivan Lins e Vitor Martins) – 1976年のアルバムで初めてイヴァン・リンスの作品に挑戦。

▶︎ 11. Boca a boca (Milton Nascimento e Fernando Brant) – 1976年アルバムより。弟ドリ・カイミも参加したミルトンとの再共演曲。

▶︎ 12. Dupla traição (Djavan) – 1976年の同じアルバムで、当時新進気鋭のジャヴァンの曲を歌う。

▶︎ 13. Milagre (Dorival Caymmi) – 1977年、アルバムのために父ドリヴァル・カイミが書き下ろしナナに贈った曲。

▶︎ 14. Se queres saber (Peter Pan) – 1947年のボレロをナナが30年後に蘇らせる(1977年)。

▶︎ 15. Fingidor (Sueli Costa) – 1977年の上述のアルバムより。女性作曲家スエリ・コスタの楽曲を初めて取り上げた。

▶︎ 16. Cais (Milton Nascimento e Fernando Brant) – 1977年の上述のアルバムより。拠り所となるミルトン作品。故郷やルーツへの回帰の象徴となる歌。

▶︎ 17. Palavras (Gonzaguinha) – 1979年のアルバムでの名唱。

▶︎ 18. Contrato de separação (Dominguinhos e Anástácia) – 1979年の同アルバムでのクラシックなサンバ。

▶︎ 19. Clube da esquina nº 2 (Milton Nascimento, Lô Borges e Marcio Borges) – 1979年の同じアルバムで、ミナス派とのつながりを再び示した。『Clube Da Esquina』(1972年)収録時には、ミルトン・ナシメントがハミングで歌っていたこの曲の歌詞を初めて披露した録音。

▶︎ 20. Denúncia vazia (João Bosco e Aldir Blanc) – 上述の1979年作。ジョアン・ボスコとアルヂール・ブランキの作品に初挑戦。

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