ペルー出身のサックス奏者アレクサ・ナヴァ、デビューEP
南米ペルーに生まれ、ジャズに魅了され英国に移住し、トゥモローズ・ウォリアーズ(Tomorrow’s Warriors)1で研鑽した女性サックス奏者/作曲家アレクサ・ナヴァ(Allexa Nava)のデビューEP『No Language』は、新たなスターの出現を確信させる素晴らしい作品だった。ロンドンで隆盛を極める現代ジャズの潮流に乗りつつ、強烈な個性で僅かな“引っかかり”を確実にリスナーに与える魅力的なサウンドに彩られた、新進気鋭アーティストによる世界が注目すべき作品だ。
EPのタイトル『No Language』は、音楽が言語を超えて感情やストーリーを伝える普遍性を象徴している。アレクサ・ナヴァ自身が語るように、クラシック音楽からジャズへと移行する中で、自己流で即興を学び、伝統的な「音楽の言語」に縛られない独自の表現を追求した結果が今作だ。今作は、彼女の音楽的探求と成長の記録であり、自己発見と進化の過程を反映している。
収録曲はすべてアレクサ・ナヴァのオリジナル。
先行シングルとしてリリースされた(1)「Cycles/Circles」は、そのタイトルが示すように「循環」と「円」を音で表現する楽曲だ。即興性と構造化されたコンポジションのバランスが絶妙で、繰り返すテーマの旋律、予測不可能なドラムスのリズム、キーボードやシンセによるハーモニーの宇宙的な広がりはフューチャリスティックで、サックスの熱量の高いソロも含めアレクサ・ナヴァという新たな才能に注意を惹かせるには充分すぎる。
(2)「CopyCat」のタイトルは模倣や追随を意味するが、アレクサ・ナヴァの意図はむしろ逆説的だ。彼女は音楽教育の制約から脱却し、自己流でジャズを学んだ経験を強調しており、この曲は「模倣」を超えて独自性を追求する姿勢を反映している。曲の構造自体が単なる模倣ではなく、既存のジャズの枠組みを借りつつ新たな解釈を加える試みを示している。
参加するミュージシャンたちはその殆どがトゥモローズ・ウォリアーズ繋がりのようだ。
特に注目すべきは強烈な個性を感じさせるドラムスのカッシウス・コブソン(Cassius Cobbson)と、絶大な人気を誇るナイジェリアのSSWバーナ・ボーイ(Burna Boy)のギタリストとして知られるソロモン・コラカレ(Solomon Kolakale)のプレイだろう。
(4)「Recortes」は彼女の革新性を象徴する。静かにグルーヴする前半部から、唐突に激しいロック・サウンドへと変貌を遂げる展開にゾクゾクする。アレクサ・ナヴァのアルトサックスは、ドラムスやギターと一体となり強い推進力を持ち、聴覚だけでなく視覚に訴えかけるサイケデリックな音はインスピレーションに満ちている。
Allexa Nava 略歴
アレクサ・ナヴァは2001年ペルー生まれ。13歳のときに中学校でシンフォニック・バンド(吹奏楽の一形態)が結成された際にサックスを始めた。その後、国立音楽院のジュニアプログラムに応募し、音楽の道を志すようになったという。フルートやクラリネットも習い、最初はクラシック音楽から始めたが、ジャズの方がずっと魅力的で自分のスタイルに合っていると感じていた。そんな中で英国ロンドンの音楽教育NPOであるトゥモローズ・ウォリアーズの存在を知り、ジャズを追求するために英国に移住。トリニティ・ラバン音楽院で学びつつ、自己流で即興演奏を磨き、伝統的な音楽理論の枠を超えた独自のスタイルを確立していった。
2021年にトゥモローズ・ウォリアーズの才能ある若手ジャズアーティストを表彰する賞「Alf Williams Memorial Award」を受賞。
Allexa Nava – alto saxophone, synthesizers, percussion
Li Sing Chi – keyboard, synthesizers
Emile Hinton – synthesizers, piano (4, 5)
Cassius Cobbson – drums
Asaph Kolakale – bass (1, 2)
Alley Lloyd – bass (4)
Solomon Kolakale – guitar (4, 5)
Sophya – vocals (5)