MPB巨匠たちを支えるアルベルト・コンチネンチーノ、コロナ禍の内省を経て創造性を爆発させた新作│Musica Terra

MPB巨匠たちを支えるアルベルト・コンチネンチーノ、コロナ禍の内省を経て創造性を爆発させた新作

Alberto Continentino - Cabeça a Mil e o Corpo Lento

稀代のベース奏者アルベルト・コンチネンチーノ、ソロ3rd

ブラジルを代表するベーシストであり、シンガーソングライターのアルベルト・コンチネンチーノ(Alberto Continentino)がソロとしては3枚目となる新譜『Cabeça a Mil e o Corpo Lento』をリリースした。MPBやジャズの伝統を音楽的な軸にしつつ、サウンドは非常に現代的かつドリーミーに洗練されており、極上のメロウ・ブラジリアン・ジャズポップを楽しめる作品に仕上がっている。

アルバムは新型コロナによるパンデミック中に制作された。タイトルは(5)「Manjar de Luz」で共演者のアナ・フランゴ・エレトリコ(Ana Frango Elétrico)による歌詞の一部を引用したもので、アルベルト・コンチネンチーノが感じていた「頭の中は忙しいが、身体は動きが鈍い」という閉塞感や内向的な精神状態を反映したもの。

アナ・フランゴ・エレトリコとの共作・共演曲(5)「Manjar de Luz」

コラボレーターも豪華で、前述のアナ・フランゴ・エレトリコのほかバーラ・デゼージョ(Bala Desejo)で大ブレイクしたドラ・モレレンバウム(Dora Morelenbaum)、リオの新世代音楽シーンの中心人物カシン(Kassin)、サイケ感覚をもった独特のネオソウルで人気のシルヴィア・マシェーチ(Silvia Machete)、ミナス出身でUKを活動拠点とする女性シンガーのニナ・ミランダ(Nina Miranda)といった才能が集結。彼らがもたらす多様性も今作の大きな特長であり、魅力となっている。

シングルカットされた(3)「Milky Way」は歌手レティシア・ペドロザ(Letícia Pedroza)をフィーチュア。

ゲスト・シンガーのいない曲でリード・ヴォーカルをとるのはアルベルト・コンチネンチーノ自身。彼の控えめなベッドルームポップ的歌声も、とてつもなく良い。

今作はMPB界の名だたる音楽家たちの低音を支える多忙なベーシストの、ほんのいっときの休息のようであり、だからこそ彼の秘めたるアーティストとしての感性がリミットを設けずに解放された作品と言って良いと思う。

Alberto Continentino 略歴

アルベルト・コンチネンチーノは1978年ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。父はピアニストのマウロ・コンチネンチーノ(Mauro Continentino)、兄にピアニストのキコ・コンチネンチーノ(Kiko Continentino)とサックス奏者のジョルジ・コンチネンチーノ(Jorge Continentino)がいるという音楽一家に育った。

15歳でベースを始め、早くからその才能を発揮。ブラジルのポピュラー音楽(MPB)やジャズシーンで活動を広げ、10代後半にはプロのセッション・ミュージシャンとしてキャリアをスタートさせた。カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)、ナナ・カイミ(Nana Caymmi)、エヂ・モッタ(Ed Motta)、セウ・ジョルジ(Seu Jorge)といったMPBの巨匠たちと共演し、その柔軟なベースプレイで高い評価を得る。

2000年には、兄キコらとジャズ・MPBトリオ「ContinenTrio」を結成。ブラジルの伝統音楽と現代ジャズを融合させたサウンドで注目を集めた。2015年に初のソロアルバム『Ao Som dos Planetas』をリリース。ジョアン・ドナート(João Donato)やマルコス・ヴァーリ(Marcos Valle)から影響を受けたメロウでリリカルなスタイルを見せる。2018年には2枚目の『Ultraleve』を発表し、ポップやファンクの要素を取り入れた進化を見せた。

Alberto Continentino - Cabeça a Mil e o Corpo Lento
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