英国の新星SSWホーネン・フォード、親友の死にインスパイアされた新作『神様がいたらいいのに』│Musica Terra

英国の新星SSWホーネン・フォード、親友の死にインスパイアされた新作『神様がいたらいいのに』

Hohnen Ford - I Wish I Had A God

大注目、英国の新星SSWホーネン・フォードの第2作

英国ロンドンを拠点に活動するピアニスト/シンガーソングライターのホーネン・フォード(Hohnen Ford)は、リスナーを一瞬で虜にする特別な才能を持っているようだ。ロンドンの豊かなジャズシーンの中で学び、とりわけジョニ・ミッチェル、デヴィッド・ロングストレス、ビッグ・シーフといったアーティストたちからも大きな影響を受けてきた彼女は、最終的にそれらの影響を結びつけ、シンプルなようでいて複雑な、色彩豊かな歌を作りあげてきた。

2022年にピアノ弾き語りのEP『Infinity』でデビューした彼女が、2作目となる今回のEP『I Wish I Had A God』で、控えめなバンドとともに帰ってきた。

全5曲、わずか18分間のこのEPは、おそらく忘れ難い音楽体験となるだろう。ホーネン・フォードのアンニュイな声が美しく魅力的なメロディー・ラインを優しくなぞり、ピアノを中心に丁寧に作られたサウンドの空間の中に浮遊する。(1)「Only Way Out」は象徴的だ。シンプルで控えめなリズム、メランコリックなコード進行とメロディー。エレクトロニックの要素は当初は控えめだが、ラストに近づくにつれて徐々に支配的となり、最後には驚くべき展開を見せる。

(1)「Only Way Out」

今作のテーマは、“喪失と癒し”だという。アルバムは彼女の親友で、34歳の若さで脳腫瘍のためにこの世を去った女性/2児の母、イモージェン・シェリー・ムーア(Imogen Shelley-Moore)に捧げられている。EPの全体に漂うなんともやるせない雰囲気の背景には、こうした重要な事情がある。
歌詞も個人的な経験に根ざしつつ、喪失を経験した多くの人が共感できる普遍的なテーマを扱う。

(3)「Another Lifetime」も特筆すべき楽曲だ。独創的でテクニカルな楽曲構成だが、その中でもキャッチーな魅力を失わない。ホーネン・フォードという作曲家の可能性が開花した、ひとつのマイルストーンのような楽曲に仕上がっている。

(3)「Another Lifetime」

ホーネン・フォードは今作について、「このEPはイモージェンとの友情の重要な瞬間を中心に構築されていて、彼女が教えてくれた人生の教訓を反映しています」と語っている。特にタイトルトラックである(4)「I Wish I Had A God」は宗教を持たない彼女がグリーフ(grief = 喪失などによる悲嘆)に向き合うとき、もしも自分が信仰を持っていれば、喪失をより理解できたのではないかという思いを吐露した楽曲だ。歌詞は詩的で内省的で、聴き手に共感と深い感傷を呼び起こす。

Hohnen Ford - I Wish I Had A God
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