シカゴ出身、マルセイユで文化の多様性を吸収したロブ・クリアフィールド、初のリーダー作

Rob Clearfield - Voice in the Wilderness

ロブ・クリアフィールド『Voice in the Wilderness』

マカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)のバンドでの活躍などで知られるピアニスト/作曲家のロブ・クリアフィールド(Rob Clearfield)による初のリーダー作『Voice in the Wilderness』。ピアノトリオを中心に、いくつかの曲ではトランペット奏者イタマール・ボロホフ(Itamar Borochov)も参加し、オーセンティックなスタイルから、クラシックの影響を受けたヨーロピアンな雰囲気を持つ演奏まで、幅広いジャズを聴かせてくれる好盤だ。

アルバムは全9曲で、同郷のトランペット奏者マーキス・ヒル(Marquis Hill)作曲の(2)「When We Were Kings」を除き、すべてロブ・クリアフィールドの作曲。詩的な抒情性をみせる(1)「Fields」、セファルディ系ユダヤの影響を受けた(3)「Voice in the Wilderness」。インタールード的な役割ももつ(4)「Play Trough That」や(6)「A Circle」、(8)「In Between」では効果的な音響処理も強い印象を残す。

(1)「Fields」

非常に丁寧に作られたアルバムだと感じる。過剰な装飾を注意深く避けながらも、随所にさりげなく個性を印象付ける仕掛けが施されている。アルバムのタイトル(Voice in the Wilderness = 荒野の声)は、孤独の中で自己表現を模索する姿勢を象徴し、彼の個人的な音楽的旅路を反映している。

Rob Clearfield 略歴

ロブ・クリアフィールドは、アメリカ・シカゴ出身のジャズピアニスト/作曲家/プロデューサー。母親は教会音楽のディレクター/音楽教師、父親はジャズ愛好家という家庭環境で、シカゴ郊外のオークパークで幼少期から音楽に親しみながら育った。

最初はギターを演奏し、ロックや南米音楽のバンドで活動したが、その後ホレス・シルヴァー(Horace Silver)の『Song For My Father』やウェイン・ショーター(Wayne Shorter)の『Speak No Evil』を聴き、ジャズピアノに転向。シカゴのルーズベルト大学で学び、2000年代からシカゴのジャズシーンで頭角を現すようになった。

2019年に新たな音楽的刺激を求めてシカゴからフランス・パリに渡り、後にマルセイユに移住。マルセイユの多文化的な環境が彼の音楽に影響を与え、クラシック、ポストロック、ヒップホップ、アヴァンギャルドを融合させた独自のスタイルを確立していった。初のリーダー作である『Voice in the Wilderness』(2025年)は、シカゴのジャズシーンとロマン派音楽の抒情性を融合させ、繊細なピアノタッチと空間的なアレンジも高く評価された。

Rob Clearfield – piano
Joe Sanders – double bass
Fred Pasqua – drums
Itamar Borochov – trumpet (3, 5, 6, 9)

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