生のアンサンブルの興奮を凝縮! 鬼才エレズ・アヴィラムがオクテットで挑戦する『ENSEMBLE』

Erez Aviram - ENSEMBLE

プログレもジャズも、ファンクも中東音楽も包み込んだアンサンブル

イスラエル・プログレ〜ジャズ界隈の代表的ピアニスト/作曲家のエレズ・アヴィラム(Erez Aviram)がオクテットを率いてニューヨークで録音した新作 『ENSEMBLE』が素晴らしい。彼のピアノはもちろんのこと、管楽器も弦楽器もそれぞれが主役となる稀有なアンサンブルによって、エレズ・アヴィラムという鬼才の音楽の源泉であるジャズ、プログレ、中東音楽、各地のワールド・ミュージックの折衷的で驚きに満ちた音世界が豊かに広がる。

今作はEP扱いで6曲/合計27分というヴォリュームだが、エレズ・アヴィラム作曲によるどの曲も充実した密度で聴き応えがすごい。アレンジは8人全員に柔軟だが意味の明確な役割が常に与えられており、緻密なスコアと即興の自由度のバランスも完璧だ。アルバムタイトルに端的に──だが大文字で誇り高く──“アンサンブル”と名付けただけのことはあり、その単語が全てを物語っている。

(1)「Quarantrio」

「レコーディングは、まるで生きたまま凍らせるような感覚です」とエレズ・アヴィラムは語る
「オーケストレーションの細部まで、そしてミュージシャンたちのエネルギーまでも捉えたかったのです。そうすれば、私が大好きな音楽に何度も何度も立ち返るように、皆さんもこの曲に再び触れることができるはずなのです」

彼が表現したかったのは、映画の名場面を何倍も感動的で印象的なものにするテーマ、ジャズという音楽の自由な精神、自然と心と体を踊らせるファンクのリズム、そしてロックの直情的で熱い鼓動といった、音楽の素晴らしい部分だった。生演奏は、それを体現する唯一の手段だ。この作品はその考えに基づき、ほぼ編集が介在しない“生のアンサンブル”の脈動を見事に捉えている。

(2)「Drift」

Erez Aviram 略歴

エレズ・アヴィラム(Erez Aviram)はイスラエルのピアニスト/作曲家。
最初にクラシックピアノを習い始め、のちにビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、マッコイ・タイナーなどのレコードを通じてジャズを習得。そしてすぐにティグラン・ハマシアンやシャイ・マエストロ、スナーキー・パピーといった、より現代的なサウンドの影響を受けるようになっていった。

2016年にデビューしたバンド、アナクドタ(Anakdota)の作曲家/鍵盤奏者としても知られており、男女ヴォーカル、ベース、ドラムス、そしてピアノという編成で、イスラエルのジャズ/プログレらしく個性的・技巧的かつポップなセンスを見せつけたデビュー作『Overloading』は世界中で絶賛。日本でも一部界隈で絶大な支持を得ている。

Erez Aviram – piano
Nicholas Biello – soprano saxophone, alto saxophone, flute
Skyler Hagner – baritone saxophone
Justin Mullens – French horn
Gabe Terracciano – violin
Jake Charkey – cello
Marcelo Maccagnan – electric bass
Maxime Cholley – drums

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