Rémi Panossian Trio 『88888888』
フランス初の国際的ポップ・ジャズ・トリオ、レミ・パノシアン・トリオ(Rémi Panossian Trio)の通算8枚目のアルバム『88888888』のテーマは、無限の象徴であり、東アジアの風水文化でもっとも縁起の良い数字とされる「8」をタイトルに冠し、とりわけ東アジアの文化への敬意をユーモラスに表す。シンプルなピアノトリオ編成ながら、楽曲や演奏は豊かな色彩感覚があり、技巧面でも超絶的なジャズでありながら絶妙にキャッチーでポップだ。
ピアニスト/作曲家のレミ・パノシアン(Rémi Panossian)を中心に2009年に結成されたトリオは、これまでに日本、中国、韓国、台湾、ベトナム、シンガポール、マレーシアといった東アジア/東南アジアで20回以上のツアーを行い、強いインスピレーションを得てきた。2023年12月の日本と中国での1か月のツアーを経て、韓国で録音された今作には楽曲タイトルを見ただけでもアジアがテーマとなっていることがすぐに分かる(もっとも、彼らは結成初期の頃からアジアからのインスピレーションが随所に散りばめられており、2011年の「Insomnia」はMVが全て日本で撮影された映像だったりしていた)。
サウンド面では、これまで完全にアコースティック・ピアノトリオだった彼らが、今作で初めてエレクトリック・ベースを導入したことも大きな変化だ。ベースのマキシム・デルポート(Maxime Delporte)は(1)「Whodunit」や(3)「Nena」、(6)「Bibimbop」、(9)「Hello Kimchi」など多くの曲でフェンダー・ジャズベースを演奏しており、これまで以上にファンクやロックの要素を取り入れた印象を与える。
アルバムは全体にわたって複雑でありながら流れるようなリズム、キャッチーで情感豊かなメロディが特徴的。感情を音楽の核とし、テクニックを感情表現の手段として見事に活用する。結成15周年となる彼らの新たな挑戦の第一歩として、多くに人に聴いてもらいたい優れた作品だ。
Rémi Panossian – piano
Maxime Delporte – bass
Frédéric Petitprez – drums