イタリア発。南米経由のソウル/ファンクバンド、Alèri 鮮烈なデビュー作『Quasi Dipinto』

Alèri - Quasi Dipinto

MPBならぬMBI!? イタリア発の最強バンド、Alèri デビュー作

イタリア北部、ベルガモ出身のSSWヴァレーリオ・ティントーリ(Valerio Tintori)が率いる大世帯バンド、アレリ(Alèri)のデビュー作『Quasi Dipinto』が素晴らしい。ソウル、ファンク、ジャズ、MPB(Música Popular Brasileira)などをミックスし、イタリア語の抗い難いグルーヴを塗した力強いサウンドが特徴で、様々な文化の出会いを原動力とした魅惑の音楽を奏でる。

あるレビュワーは、今作について「MPB」ならぬ「MPI」、すなわちMusica Popolare Italiana(イタリアのポピュラー音楽)だと指摘している。私も全面的に賛同したい──
彼らのサウンドからは古くは1980年代のジャヴァン(Djavan)から、2000年代のガブリエル・モウラ(Gabriel Moura)とセウ・ジョルジ(Seu Jorge)のあの伝説的なファロファ・カリオカ(Farofa Carioca)の音が鮮烈に脳裏に蘇る。それはつまり、アメリカのスライ&ザ・ファミリー・ストーン(Sly & the Family Stone)やジェームス・ブラウン(James Brown)の音楽を、わざわざ南米を経由してからイタリアに輸入した音であることを意味する。強靭な推進力をもったグルーヴが表現するテーマは理想化された関係の複雑さ、距離、後悔、仮面だけが報われることの多い現代社会で“本物の自分”を保つ苦闘など、社会と個人・理想と現実といった密接に連動する事象の狭間で揺れ動く人間個人の生々しい感情を描き出す。

(1)「Atlântico」はメランコリックにコードを刻むピアノ、軽やかに跳ねるリズム、力強いホーンセクションなどで一気にリスナーを惹き込む最高のオープニングだ。歌詞では感情の孤島に取り残されたような孤独感を描き、過去の恋愛を振り返る距離と懐かしさを、海や島のイメージで物理的・感情的な分離を表現し、再会への渇望を込める。

先行シングルの(1)「Atlântico」

人生の再スタートを求めながら、絵画のような理想化された関係の脆さを示唆するアップテンポの(2)「Dipìnto」。本物のつながりや、癒しの力を持つ人を渇望する(3)「Reàle」。

(6)「Arrivederci Logica」では論理を捨てて音楽に浸る解放感を軸に、社会的な虚栄心や商業主義を批判。自覚と本物の喜びを追求し、“雨のような夏”や“冬の太陽”といった比喩で非日常の美を称賛。自己受容と他者の幸福を優先する世界観が強く反映されている。

Alèri - Quasi Dipinto
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