95歳現役のベース革新者フランソワ・ラバト、世界を巡ったツアーにインスパイアされた新作

Rabbath Electric Orchestra - Amall

巨匠フランソワ・ラバト新譜『Amall』

ダブルベースの奏法に革新をもたらしたフランスの伝説的なベーシスト、フランソワ・ラバト(François Rabbath, 1931 – )と、その息子であるピアニスト/作曲家/プロデューサーのシルヴァン・ラバト(Sylvain Rabbath, 1984 – )を中心としたプロジェクト、ラバト・エレクトリック・オーケストラ(Rabbath Electric Orchestra)のデビュー作『Amall』が素晴らしい。

フランソワとシルヴァンのラバト父子はの過去6年間の世界ツアーの経験の成果である今作には、総勢24名ものミュージシャンが参加。アルバムはセビリア(スペイン)からミネアポリス(米国)までを繋ぐような多文化的なテーマを主体としており、楽曲ごとに異なる風景を映し出す。ジャンルとしてはオリエンタル・ジャズが収まりどころかもしれないが、即興の余地を多く残しつつも壮大なラージ・アンサンブルの緻密なアレンジも際立っている。
とりわけ齢95歳(2025年現在)となるフランソワ・ラバトのダブルベースは、随所でフィーチュアされる特徴的なアルコソロを聴けばわかるように年齢による衰えなどは一切感じさせない驚くべきものだ。

(1)「Sevillana」

米国のベーシスト、ヴィクター・ウッテン(Victor Wooten)とフランスの鍵盤奏者ローラン・ド・ウィルド(Laurent De Wilde)をフィーチュアした(1)「Sevillana」、ラバトのルーツである中東の影響が窺える(3)「Samares」や(5)「Atoun」、親密でメランコリックな雰囲気の(7)「Camomille」などなど、音楽的遺産を継承しつつ独自の革新を見出していく。

François Rabbath 略歴

フランソワ・ラバトは1931年にシリアのアレッポで音楽一家に生まれた。12歳の頃、兄の部屋でダブルベースを見つけ、興味を持ったのがきっかけで、13歳から演奏を始めた。エドゥアール・ナニー(Édouard Nanny, 1891 – 1958)が書いたフランス語のコントラバス・メソッドを独学で習得し、家族でレバノンのベイルートに移住後に兄弟のバンドに加わり、プロとしてのキャリアを開始。9年間働いて貯めた資金で1955年にパリへ移住している。

1963年に初のソロアルバム『The Sound of a Bass』をリリース。以降、1970年代に『Bass Ball』、『Multi Bass ’70』などのアルバムを発表し、ジャズ、クラシック、民族音楽を融合させたスタイルで注目を集めた。1964年から映画や劇場の作曲も手掛け、ヨーロッパでソロリサイタルを開始。1975年にカーネギーホールでアメリカでもデビューしている。

彼の最大の貢献は、ダブルベースの革新的な奏法の開発だ。ダブルベースの奏法における伝統的な限界を突破するために左手の使用法を重視したメソッドを確立し、世界中のベーシストに大きな影響を与えた。

Francois Rabbath – double bass
Sylvain «Habibisly» Rabbath – piano, Rhodes, synthsizer
Julien Boye – drums, chrystal bachet
Julien Favier – percussions
Hans Sturm – bass
Xavier Bizouard – tenor saxophone
Valentin Pellet – trumpet
Olivier Hutin – flute
Aurelien Fradagrada – guitar
Pendit Dinesh – percussion
Gp Cremonini – bass
Lynn Adib – vocal
Mathieu Chedid – guitar
Laurent De Wilde – piano
Guillermo Benavides – bass
Raphael Imbert – bass clarinet
Poto Austin – bass
Victor Wooten – bass
Minino Garay – percussion
Keziah Jones – guitar
Benoit Pineau – violin
Lucie Leker – violin
Olivier Marin – viola
Raphael Moraly – cello

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